村上春樹 『東京奇譚集』

村上春樹 『東京奇譚集』

東京にまつわる奇譚を集めた短編集の『東京奇譚集』を読む。というか読んでなかったのを思い出した。 2005年の9月初版ともう一年前の本屋で、確か『アフターダーク』を読んで「駄目だこりゃ」と思ったので、次に出たこの『東京奇譚集』はパスしていたはず。 買うのは何やけど、図書館で借りて読む分にはええやと言うことで借りて読んだ。 「新潮」に連載された四作品と書き下ろしの一作品の構成。 ころっと作風を変えた『[…]
アゴタ・クリストフ『どちらでもいい』

アゴタ・クリストフ『どちらでもいい』

今年の9月に出たばかりのアゴタ・クリストフの短編集『どちらでもいい』を読む。 アマゾンでは夫が死に至るまでの信じられないような顛末を語る妻の姿が滑稽な「斧」、著者自身の無関心を表わすかのような表題作など、全25篇を収録。祖国を離れ「敵語」で物語を紡ぐ著者の喪失と絶望が色濃く刻まれた異色の短篇集。 と紹介されているが、訳者のあとがきによると、これらの物語は1970年代から1990年代前半のアゴタ・ク[…]
阿部和重『シンセミア』上・下

阿部和重『シンセミア』上・下

阿部和重『シンセミア』を読了。 毎日出版文化賞、伊藤整文学賞をダブルで受賞したこの作品は、総ページ816、原稿用紙にして1600枚の長大な物語であり、一気に読ませるストーリーテリングの力を持っていた。 「神町」に住む複数の人間の視点から語る物語が重層的な構造をなして「神町サーガ」を形作る構成を取る訳であるが、過去に読んだ阿部和重の作品と同じく、この作品の中に人間的な魅力を感じられるような登場人物は[…]
アゴタ・クリストフ『文盲』

アゴタ・クリストフ『文盲』

アゴタ・クリストフ『文盲』を読んだ。 110ページとあるものの1ページあたりの文字数は少なく読破に30分くらいしかかから無い。 自伝と言うことになっているけど、「読む事」「書く事」に関するテーマについて年代順の記憶に沿って書かれており、そんな短い文章の組み合わせの構成は「自伝的随筆」と言ったところか。 母語であるハンガリー語ではない「敵語」で書かざるをえなかった苦しみと不自由さからこの『文盲』とい[…]
平野啓一郎 『葬送 第二部』

平野啓一郎 『葬送 第二部』

『葬送 第二部』を読み終えた。 ショパンが久しぶりに多くの聴衆の前で行う演奏会から二部が始まり、二月革命のあおりを受けてイギリスへ旅立ち、体調を崩してフランスに帰り、姉と友人たちの見守る中息を引き取る場面で物語は終わる。 一般的には中々好意的な感想が多く、重厚で骨太な正統派の小説であるという意見が多く見受けられるが、webで見る限り発売された当初の大掛かりな取り上げられ方に引き換え、それほどは話題[…]
炬燵と火鉢を出して本を読む 日記/雑記/妄談

炬燵と火鉢を出して本を読む

炬燵と火鉢を出して部屋に据え付ける。 炬燵に這入り、火鉢で手を炙りながら本を読む。 昨日、遠まわしながらも明確な意図を持った様に聞こえるお誘いを気付かなかったふりをして黙殺した事を思い出し、自責と後悔の念を少し覚える。 一体自分は何故こんなに臆病になってしまったのだ?何をそんなに恐れているのだ?と思うも、そんな想念を振り払って本に没頭する。 市営の図書館と職場の図書館で本を借りて読みまくる、ここ一[…]
ナディン・ゴーディマ『ゴーディマ短篇小説集 JUMP 』

ナディン・ゴーディマ『ゴーディマ短篇小説集 JUMP 』

長編を読み進む合間に骨休め的にナディン・ゴーディマの『ゴーディマ短篇小説集 JUMP 』を読んだ。 著者は南アフリカのユダヤ系白人の女性作家で、1991年のノーベル文学賞を受賞している。 白人側の立場にありながらも一貫して反アパルトヘイトの立場を取り続け、著作が発禁にもなった多作な作家で、短編小説の評価が高いとされているらしい。 この本はノーベル文学賞受賞後に書かれた短編集で、人種隔離政策が全廃さ[…]
自失 日記/雑記/妄談

自失

最近は家に帰ると本ばかり読んでいる。 あまりに一日が短く感じられ、久しぶりに一日が24時間であることに不満を覚える。 読みたい本が山ほどあり、それら全てが市の図書館に所蔵されているのはなんと幸せなことか。読みたい本を検索してそれをいつでも借りて読むことが出来るという事実にニヤニヤしてしまう。 今日も引き続きショパンとドラクロワの物語に文字通り没頭する。 ラジオからモーツァルトのレクイエムが流れるに[…]
平野啓一郎 『葬送 第一部』

平野啓一郎 『葬送 第一部』

平野啓一郎の三作目の長編『葬送 第一部』を読む。 553ページと恐ろしく長い本だが、第二部は700ページ超と更に長い。あわせて原稿用紙2500枚の大作と言うことらしい。 19世紀半ばの二月革命前後のパリを舞台にフレデリック・ショパンを中心にして、その友人ウジェーヌ・ドラクロワ、その愛人のジョルジュ・サンドの三人の芸術家たちを主軸に物語が展開する。 彼のデビュー作である『日蝕 』や二作目の『一月物語[…]
鯵・フランス 日記/雑記/妄談

鯵・フランス

帰りにいつもの魚屋でお造り用鯵が売っていた。 「これは安い!」と言い切れないほどの微妙な値段だったが、造りにできる鯵が出ているのは珍しいので買って帰ることにする。 片身を刺身、片身をタタキに、残りのアラは味噌汁か煮物に投入予定。 最近はどんな魚でも刺身とタタキを食べ比べるとタタキの方が美味しく感じるので両身ともタタキにすればよいのだが、タタキの串に刺して火で炙るという調理法に比べて、刺身で皮をひく[…]
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