村上春樹 『東京奇譚集』

東京にまつわる奇譚を集めた短編集の『東京奇譚集』を読む。というか読んでなかったのを思い出した。
2005年の9月初版ともう一年前の本屋で、確か『アフターダーク』を読んで「駄目だこりゃ」と思ったので、次に出たこの『東京奇譚集』はパスしていたはず。
買うのは何やけど、図書館で借りて読む分にはええやと言うことで借りて読んだ。
「新潮」に連載された四作品と書き下ろしの一作品の構成。
ころっと作風を変えた『アフターダーク』の後に出版されたにもかかわらず、入っている作品はすべていわゆる「村上春樹ワールド」で中々心地良い。
三人称を使った一人称語りで、真似しやすそうやけど実は中々難しい文体と読者を引っ張り込むストーリーテリングはもう職人芸やと思う。
私自身は村上春樹を長編作家だと見なしているけど、彼の短編をこそ評価する人も多いように、長編にはない味を出す彼の短編もいいなぁと改めて思った。


amazon ASIN-4103534184村上春樹の短編は、長編のようにストーリーテリングが無くても余韻のようなもので読ませるし、どの物語にもちょっとした悲哀と警句が必ず含まれていて、短い話であるが故にはっきりとしたテーマを読者に印象付ける効果があるように思う。
そのあたりが村上春樹をして職人芸的短編小説作家たらしめるゆえんだろうし、彼が書いた短編から長編を膨らませることが多いという事は、長編のテーマたるものを短編を持っているということであり、なかなかお得感がある。
彼の書く長編はある程度あたりはずれがあるけど、彼の短編は殆どハズレ無しではないだろうか?
個人的には彼の動物系の話が好きな事もあり、五つの短編の中で一番気に入ったのは「品川猿」である。
是非とも「かえるくん」との共演を期待したい。。

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