映画:「ゾンビ」 / ゾンビショッピングセンター / 主人公たちが一番怖い

amazon ASIN-B0002CHNHO最近ゾンビ映画がお気に入りなので、ゾンビ映画の伝説的な大傑作であり、後のゾンビ映画とゾンビの概念を決定的に基礎付けたという、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」(1978/米=伊)を観た。
この映画はやたらとマニアが多く、色々なバージョンのDVDやらビデオやらLDが高値で取引されているらしいけど、私が見たのはそのなかでも一番評判がよさそうな「米国劇場公開版」というやつである。
死者が蘇ってゾンビとなり人間を襲って肉を食べる現象が起こり、街は壊滅的な状態になっていた。テレビ局の男女二人と軍人二人はヘリに乗って街から逃れるが、どこに行ってもゾンビばかり。
やがて見つけた巨大ショッピングセンターに篭城し、ゾンビたちを閉め出して何不自由ない生活をおくりはじめるが…と言う感じである。


やたらと良い評判ばかりを聞いていてとても硬派なひたすら怖いゾンビ映画だという思い込みでこの映画を観たけど、今の洗練されたゾンビ映画に慣れた目から見ればけっこう笑えた。
今時のゾンビ映画のようにひたすらホラーな路線を貫こうと言うよりも、恋愛や友情、社会批判やコメディーの要素が中途半端に入り混じっていてなんとなく散漫な印象を受けた。
このあたりの映画としての作りは1951年の映画「遊星よりの物体X」と似ている。
古い映画って言うのはこういう何でもかんでもいろんな要素を詰め込みたがるような作りで微笑ましいなぁ。
よく考えれば、かなり絶望的な状況やけど、ひたすら消費活動と破壊活動と殺戮活動にいそしむ主人公たちが良い者なのか悪者なのかがだんだん分らなくなってくるのが面白い。
当初主人公たちはゾンビの止めを刺すのに苦悶の表情で引き金を引いていたのに、いつの間にか楽しみながら満面の笑みでゾンビを虐殺し、欲望のままにショッピングセンターを略奪している。
ゾンビしかいない世界で役に立つのは銃と食料くらいのものやけど、それでも巨大ショッピングセンターで品物使い放題取り放題というのは、子供心の「これ全部俺のやったらなぁ!」なる稚拙な欲求にダイレクトに響く爽快感があり、実質的に役に立たない腕時計や家電品や服や札束を漁る彼らの気持ちは良く分る。
途中でショッピングセンターを襲う強盗団との戦闘になり、ホーラー映画の王道通りに「やっぱり人間が一番怖い!」て言うことになるのか?と思ったもののそうでもないままに終わった。
それでも、やっぱりこの映画で一番怖いのは人間を襲うゾンビではなく、そんなゾンビたちを虫けらのように撃ち殺して欲望のまま振舞う主人公たちであるから、「やっぱり人間が一番怖い!」ということになるのだろうか。
変な明るさとコメディタッチな雰囲気の中で、肉を食いちぎったり肉をちぎりとったりする描写が中々エグかったし、ハッピーエンドに見せかけたかなり悲惨な終わり方で、なるほどマニア受けする要素はたくさんあるなぁと思った。

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