PROSPECT/細部に神が宿る映画

 

2019年07月20日にアメリカ/カナダで公開されたらしい『PROSPECT』なる映画を見た。
想像以上に、というよりも予想を遥かに超えて素晴らしかった。
見終わった後にもう一度見たくらい素晴らしかった。
宇宙船が飛び交う戦争を描くようなハリウッド的SF映画の対極にあるが、今まで見たことのない1つの世界をちゃんと完璧に作り出している。その世界を説明不足なほどに語りすぎないのもいい。
これは惑星ソラリス、ダークスターと並ぶ大好きなSF映画の一つになりそうな予感。
冒頭のレトロチャイニーズ風の音楽と主人公の少女がノートに綴る文字に完全に持っていかれた。
モラハラ的な父親と二人だけの貧困にあえぐ生活を営む、音楽だけが友達の孤独な思春期の少女が、腐海のような瘴気である「粉塵」が漂う原生林に覆われた星にポッドで降りて宝石を採取する物語だが、どちらかというとその少女の内面の物語が見どころだ。
主人公の少女の魅力はもちろん映画全体に漂う雰囲気から世界観から音楽から小物まですべてが素晴らしい。
宇宙船のコンソールはもちろん、母船への帰還時間を示すタイマー、宇宙服や無線、そしてポッドの制御プログラムらしきROMカセット、ヘッドフォンと70年代風テクノロジーに今の電子デバイスのスパイスが混じったガジェット、手回し充電?or ゼンマイ式銃器、登場する文字も恐らく架空の文字だし、「宝石」の成り立ちとその採取方法、レーションのパッケージ、少女の着る宇宙人プリントのTシャツまでこの映画に出てくるすべてが素晴らしい。

神は細部に宿るというけど、この細部をベースにして描かれる他者との交流の中で癒され育まれ得られる少女の孤独と感情そして自由への渇望の描かれる様が素晴らしい。
そしてラストシーンが何よりも良い。
原題の「PROSPECT」は天然資源の調査の意味合いが映画的には近いけど、少女シーにとっては「望ましいことが起きる見込み」や「将来の展望」の意味合いでもあるな。
少女シーが愛読するも失われた『stream girls』(翻訳は『流れる少女』)の本の中の物語について語るところにぐっと来た。
そして映画の中で語られる少女シーの12歳の「ジェイダル・バルー」の処理の物語、この映画のエピソード0を見たいけど叶わないだろうなぁ。。。

この映画は興行的には上手く行ったとはいいがたく、DVDを買おうとしても日本語字幕のものが見つからなかった。
とりあえず英語DVDでも買っておくかな。。。

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