2022年お盆休みに面白かった映画

長い長いお盆休みが終わる。
五月の末からこのお盆休みまでは本当に色々あった。そして九月からはまたさらに色々あるだろう。
その嵐の間の凪のようなこのお盆休みは日常的な買い物以外全く出かけずに引きこもってひたすら映画を観ていた。
観た映画はメモとしてfilmarksへ投稿していたがここにも面白かった映画を書いておく。
多分、きっと将来、あの頃はこの映画を観て面白がっていたと懐かしく思うだろう。
ただし先日書いた「オンネリとアンネリシリーズ」はもう紹介したので除く。

プラットフォーム(2019年製作の映画)
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CUBEとかsawのように低予算でアイデアと設定と演出で勝負するタイプの映画だ。
格差社会のゼロサムゲームのように見えるが、上位階層による下位階層に対する搾取構造がないので、どちらかと言うと資源の分配の話になるだろう。
主人公が「俺は人間をやめるぞー!!」状態まで想像以上に早かった!
女殺し屋が食べていたものにボカシが掛かっていたけどもしかして!!??
そして物語のラストにポカーンとなった。
やろうと思えばきっちり整ったオチをつけることもできただろうがそうしなかったのは製作者自体もこの映画で語られる問題について回答が思いつかないのかもしれない。
だからこそ最後の「メッセージ」に全てを託すということになったのかもしれない。

ゾンビマックス!怒りのデス・ゾンビ(2014年製作の映画)
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最近シリアスなものばかり見ていたのでちょっと笑えるB級を見たくなり、何故かアマプラが猛烈に勧めてくるので観ることにした。
笑えるB級を見るつもりでいたのにいきなりシリアスなスタートを切るものの、突然笑えるシーンが来る。以降はシリアス笑えるシリアスと交互に切り替わり、結局全体としてはやっぱり笑える。
邦題がなんちゃらマックス怒りのなんちゃらロードのパロディみたいだけど、原題は「Wyrmwood: Road of the Dead」らしい。
Wyrmwoodの意味は分かりにくいが、地を這う系の怪物”Worm”の古い綴りが”Wyrm”なので、”Wyrmwood”は”wormwood”となり、ニガヨモギという意味になる。
映画の中でも言及されるヨハネの黙示録で世界の終わりに際して水の三分の一を飲めなくした空から落ちてきた燃える星の名でもある。
つまり、原題は邦題のようなB級感あふれるパロティーのようなものでは無く、キリスト教圏では世界の終わりのシンボルでもあるヨハネの黙示録の「ニガヨモギ」をメインタイトルとして、”xx of the Dead” とゾンビ映画の正統的な名付けであるサブタイトルという構成になる。
つまり、終末的な雰囲気が満開なゾンビ映画にふさわしいタイトルなのだ。
邦題はタイトルからして B 級感溢れまくってるが、実はとてもちゃんと練られて考えられて作られた完成度の高い面白いB級ゾンビ映画だった。あ、やっぱりB級か。
ゾンビ映画が一番低予算で監督のアイデアや才能を発揮できる映画であるとよく言われるのが本当によく分かった。
これは続編が観たいぞ。
ただし、「Road of the Dead」ではあるものの、ロード・オブ・ザ・リング感はあまりなし。
オーストラリア映画なので車は右ハンドル。

ブルークリスマス(1978年製作の映画)
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大好きな岡本喜八が監督だと言うことで見た。
UFO が地球に飛来し、その光を浴びた人の血が青くなり、そうなった人はがただ血が青いだけでなんの変化もなくむしろ血が赤かった時よりも人間的な妬みや憎しみなどの負の感情が少なくなるという。
政府はその血が青くなった人を敵性対象と指定して秘密裏に葬ろうとする話である。同監督の「日本のいちばん長い日」のようなドキュメンタリータッチで物語が進む。
人間の未知のモノに対する恐怖から来る根源的な差別の問題がメインテーマというところだが、
昔の映画なので登場人物のおっさんがすべからくタバコを吸っていて見ているだけで煙たくてしょうがなかった。
オープニングのタイトルの英題が「blood type :blue」とあり「使徒なん??」と突っ込んだが、この映画が元ネタだったとあとから知った。
竹下景子パターン青!クリスマスイブにケーキとワインとチキンを用意して、来るかどうかも分からない彼氏を健気に待つタイプの使徒です!!
と、盛大なネタバレを書いておこう。

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

タイトルの画像に惹かれて観た。
典型的アメリカン金持ち階級に嫁いだ主人公が妊娠と孤独を機に異食症を発症する物語。
原題のswallowは飲み込むという動詞とツバメという名詞のダブルミーニングか。
始終目をそむけたくなるキツくて痛そうな映像だ。
何かしらの社会的個人的家族的な立場で主人公以外の登場人物の最適解とされる言動がどれだけ空っぽかというのに空恐ろしくなる映画であり、
見どころはこの主人公の魅力一点に尽きるのだが、その主人公の美しさや誠実さや怒りや醜さの感情そのものが、空虚な登場人物と同じような自分自身の凝り固まった感覚の存在を教えてくれる。
そして最近問題になっているカルト宗教の二世の話で、そのカルト宗教を否定する気持ちと、そのカルトの合同結婚式がなかったら生まれなかった事実との間に引き裂かれる。という話を聞いてすごく衝撃を受けたのだが。
この映画もそういった苦悩をも描いている。
というかすべての発端はそこかな?
怖い!

孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)
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全ての人が死に絶えた世界で、何故か1人だけ生き残った小人症の図書館員の男が、家々を訪れて死んだ人たちを埋葬し、家を片付け、本を読み、釣りをして過ごす静かな生活を送っているところにもう1人の生存者を見つける。という話。
この系統の映画にはない淡々とした静かな雰囲気がとても素晴らしい。
逆光がとても印象的だった。

Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)
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銃器とクレイモア地雷の使い方が今までにない斬新さで素晴らしい。
しかも主人公チームが使う武器は古いものばかり。
SIGで武装したロシアンマフィアとは…
セガール氏のように無双するのではなく、ちゃんとパンチもナイフも銃弾も貰う所が良い。
にも関わらず胸糞展開が皆無なのもイイね!
非の打ちどころなし!最高!

シルミド/SILMIDO(2003年製作の映画)
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なんとなく観た。
韓国版フルメタルジャケット??という勢いで始まり盛大な内ゲバとして物語は進んでゆく。
汚れたおっさんしか出てこないひたすら暑苦しい映画だったが、中だるみもなくまぁ面白かったかな。
韓国映画特有の過剰に情感たっぷりな演出は、特に軍人ものだとギャグなのか本気なのかわからなくなる。
やっぱりこの手の映画にはハートマン的なキャラと微笑みデブ的なキャラは必要なのだと思う。
よく担当教官を撃てるな?簡単さ。動きが鈍いからな。

ムーンフォール(2021年製作の映画)
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エメリッヒ監督がコロニー…じゃなくって月を落とすと聞いたが、やっぱりコロニー落としの話だった。トンデモ陰謀論をバックグラウンドにオタクのアメリカンヒーローが世界を救う。
ディザスター映画と見せかけてとんでもストーリーが展開する。壮大なB級映画として見ればとても楽しめる。
後半は大好きなプレデターが出てくるかとワクワクしたけど出てこず残念。
超次元意識体と融合したオタク博士先生の次回作の活躍をお楽しみに!
月に変わってお仕置きよ!!

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
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公開当時そこそこ話題になっていたけど、意外にボロクソに言うてるやつが多いなぁという印象で内容についてはほとんど知らないままに見た。
美女と野獣をベースに最終決戦はマクロス+ナウシカといったところか。
覚えています〜か〜♪らんらんらららん♪
設定が想像以上に重かったけどビジュアルがとても好き。
主人公の棒読み感が最初気になったけど、最後の方はこれはこれで味だと感じるようになってきた。ふしぎ!!
これも映画館で観たかった。面白かった。ヤックデカルチャー

ミッドサマー(2019年製作の映画)
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なんか怖いという話を聞いていたので見た。
日の沈まないスウェーデンの白夜の中で行われる伝統的宗教行事に参加した学生たちの話。
観ているとヨーロッパに行った時に感じる日の長さ、もう夜なのにまだまだ明るくてまだまだ遊べるという高揚感と同時に感じる疲労感が混ざったようなテンションが湧き上がってくる。
映像の美しさと村の人々の美しさが伝統行事の全てを肯定しているように感じさせられる。
主人公の嗚咽や死にゆく人々に共感して同調する村の人々が印象的だった。
花に包まれて玉座に座る絵面が美しい。

劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん(2019年製作の映画)
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アマプラの一覧で面白そうだと思って観たがとてもいい映画だった。
私はオンラインゲームは全くやらないけどFFシリーズは大好きなので劇中の画面や音楽にとてもグッと来た。
映画を観たあとに原作がFF14の攻略ブログ内の企画であり、既にドラマ化されていたと言うことをに知りそのブログを読んだ。
そして原作者がつい最近亡くなっていたことを知って衝撃を受けたけど、原作者の目指した通りゲームの中の世界で人が救われうるという事を見事に示していたように思う。

プロメア(2019年製作の映画)
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独特のテイストの世界観で貫かれる王道アニメだった。
画面中が最原色で塗りつぶされポリゴンを多用した画面がちょっとレトロな味を醸し出しているような。
敵も味方も二転三転して物語に引き込み、中だるみなしで最後まで駆け抜ける。
感触としてはグレンラガンに近いけど、グレンラガンで時々現れる圧倒的な絶望感のようなものはあまりない。しかしこれは尺が短いのでしょうがないようにも思う。
これは映画館で観たかった。

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
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田辺聖子の短編が原作。
私が主人公と同じくらいの年代の時に良く行った場所が出てきてとてもノスタルジックな気持ちになる。
人は自分の知らない世界を見せてくれる人に恋をし、自分に知らない未来を見せてくれる人を好きになるのだ。
劇中劇が素晴らしい作品は、まちがいなくその下部構造であるその作品自体も素晴らしい。
劇中の創作紙芝居に出てくる自由の白い翼は想像と創造の翼でもあるように思う。

団地(2015年製作の映画)
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全く前知識なしで観たけどめっちゃ面白かった。
あれ?というちょっとした違和感が最後にええーっ!と回収されるのは圧巻。
主人公夫婦の私的なミニマムな話と、団地という閉ざされたコミュニティのミクロな話が圧倒的なスケールのマクロな話に包み込まれるのが驚く。
役者の誰もがリアリティを持っているのがすごい。
これは日本語で見られてよかったなーという映画だ。
しかし filmarkに登録するために「団地」と検索すると「団地妻」ばかり出てきて笑える。
これは「シン・団地妻」だな。

宵闇真珠(2017年製作の映画)
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『花様年華』のカメラマンの監督作品。
香港最後の漁村と雑多なアジアの風景と美少女のコントラストが美しい。
あとオダギリジョーの無駄遣い。
何かが進展するようで何も進展せず、とにかく主演のAngela Yuenの美を鑑賞する映画。
ロリコン監督が自らの愛人の美だけを追求した、ひたすらナスターシャ・キンスキーを愛でる映画の『テス』、常夏の無人島で育った野生の美少女が生まれたままの姿で走り回るうら若きミラ様にありがたやーと手を合わせたくなる「RETURN TO THE BLUE LAGOON」と比類する美しさ。
やはり、「もうすぐ中国五千年」の生み出したチャイナドレスの破壊力はつくづくすごいと思った。

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