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2010年11月11日

二沢雅喜、島田裕巳『洗脳体験 』/インスタント「死と再生」

二沢雅喜、島田裕巳の『洗脳体験 』を読んだ。
先日から本読みスイッチが入って軽い本を読みまくったと書いていたけど、『ネトゲ廃人』『卒業式まで死にません』『自殺されちゃった僕』、そして『洗脳体験』ってタイトルだけ見てると全然軽くないような気がして来たけどまぁいいか…
この『洗脳体験 』は、「本当の自分を見つける」「可能性を開く」「自己の殻を打ち破る」「心の癒し」「トラウマの解消」だとかいったような所を目指す、いわゆる「自己啓発セミナー」とか「自己開発セミナー」に実際に参加して、守秘義務を破って中で何が起こっていたのかを詳細にレポートしたのが前半、後半でその「自己啓発セミナーが」如何に「洗脳」の手法を利用したものであるかを明らかにし、その「洗脳」について語っている本である。
私がこの本を読んだ時点で知っていた「自己啓発セミナー」とは『人格改造マニュアル』の中にのっていたような、大の大人が皆の前で号泣して罪を告白したり、皆が愛に満たされて抱き合って号泣するとかいうなんかとてつもなく胡散臭いが妙に興味深い話であった。
この本の中で書かれている事はまさにその胡散臭い話どおりの号泣やら絶叫やらが満載で、なるほど元になっている理論は精神療法や心理療法のものと同じであるのが良くわかった。
そして、驚くことに、胡散臭く思えつつも同時に行われている事自体は確かにかなり興味深い。正直言ってかなり面白そうであるし、感動的ですらあるのだ。
「自己啓発セミナーとは」人によっていわゆる「地獄めぐり」とか「井戸に潜る」とか「死と再生」と表現されるような体験を意図的に短期間でなるべく強烈に与えるためのシステムであるといっていいだろう。


その「自己啓発セミナー」であるが、そもそもは昔に金持ちのエリート層向けに精神療法や心理療法の理論や手法を元に少人数に高い金を取って長い時間をかけてじっくり行われていた帝王学的な位置づけのセミナーであったものを、そのエッセンスだけを吸収して金儲けの為に庶民向けの短期間で安くて大勢に対するチープなものとして作り変えられたものであると言うのが中々興味深い話であった。
精神療法や心理療法、或いは最初期のセミナーが細心の注意を持って殆どマンツーマンで慎重にゆっくりととても注意深く行われているのに引き換え、「自己啓発セミナー」は単位あたりの利益を最優先するために、一度に大勢に対して短時間で同じような効果を及ぼそうとして雑で刺激が強くなり、同時に弊害も出てきたと言うわけである。
自己啓発セミナーの一番の社会的な問題はセミナーを受けた人がセミナーの一環として友人や知人を激しく勧誘するように操られるところにあると言われる。
それは、結局その「自己啓発セミナー」の商業的な目的が、人の持つ変わったり癒されたり成長したいという欲求を満たすことをエサにして、最終的に金儲けのためにタダで動くマシンとして洗脳するところにあるわけで、その事実は実際に「自己啓発セミナー」を受けて変わったり癒されたり成長した人にかなりのショックを与えるに違いない。
それが自己啓発セミナーに対しての怒りや絶望にだけ向いていればいいが、自分自身の変化や成長や癒しをも否定しまうことになるとかなりのダメージになるのは容易に想像できる。
自己啓発セミナーにどっぷり肩までつかってしまった人はその社会的なリスクを背負い込んでしまった上に、更に心理療法を失敗した時と同様のリスクもまた高い可能性で背負っているわけである。
そして、この金儲けのみを目指した「自己啓発セミナー」が余りにも胡散臭かったお陰で、昔から有効で意義のあるとされていた心理療法や精神療法も「自己啓発セミナー」と同様の胡散臭いものであるようとされてきたことも、社会的な弊害と言えるかもしれない。
例えば、最近まで「森田療法」は怪しい自己啓発の類だと思っていたのだが、笠原嘉がお勧めしているのを読んで初めて、そんなに胡散臭い療法じゃなかったのを知ってびっくりしたくらいである。
この「自己啓発セミナー」に限らず、人間の成長とか癒しとか変化が一足飛びで早急に訪れたような人、或いは変化を急ごうとする人は何だかとても危うく見えるし、積み上がるのが早ければ早いだけ、崩れた時の悲惨さが増すような気がする。
とにかく、なんつーか、ゆっくりと癒されて成長して変化してゆくしかないのですな。

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