吉永嘉明 『自殺されちゃった僕』 / 渦中の人のリアルさ/解説ではなく全否定

amazon ASIN-4870316382amazon ASIN-4344412206吉永嘉明の 『自殺されちゃった僕』を読んだ。
この本も本読みスイッチが入ってから読みまくった本の中の一冊である。
著者の吉永嘉明は鬼畜系、アングラ系と呼ばれる書物をおもに扱う編集者やライターであり、
この本は吉永嘉明が友人である「ねこぢる」、編集者としての先輩である「青山正明」、そして妻を立て続けに自殺で失い、その思い出やら喪失感やらを何やらかんやらを書き綴った手記である。
最近、今更ながらに「ねこぢる」が気に入って読んでいるのだが、そのねこぢる自身とその夫の山野一について知りたくてこの本を読んだのが半分、そして立て続けに中の良い人を三人も自殺で失ったというセンセーショナルで煽るようなタイトルや内容が半分というところだろうか。
文庫化もされているようで中々人気の一冊のようである。
この本は遥か昔に起こったすでに過去のものとなった自分を取り巻く出来事について書くというような視点ではなく、まだ渦中にありながらもそこから立ち上がるための一つの試みとして書かれた本であるらしい。
つまり、「行き辛い人がいかに生きるか」というよりは、「自殺されるとどれだけ悲しいか」の一点だけをひたすら述べた本である。
明らかに混乱しながら支離滅裂で語るような語り口が妙にリアルに感じられた。


そういう意味で、この本はまだその悲しみや絶望の渦中にいる人がその内面を吐露した本でしかないから、何らかの悲しみや絶望から立ち上がりたいと希望して読むと、立ち上がるきっかけを得られるどころか、一緒に鬱に引きずり込まれること間違い無しである。
この本で作者は自分がこの状況で自殺しないのは心配してくれる友人がいるという一点だと力説しているが、逆にそのことは「自分が死んでも誰も悲しまない」と確信している自殺願望者を突き放して背中を押してしまうに違いないだろう。と考えるとちょっと恐ろしい。
この作者のようにドラッグや鬼畜やアングラのカルチャーの最先端を走っている人が、これだけの絶望でも自殺に踏み切らずにもがきつつ生きようとする様は人間の生命力の強さを教えてくれるようでもあったし、また、結局の所、本当にどうやっても自殺しちゃう人はどうやっても止められないし、自殺を選ばざるを得ない人もいるかもしれないと言うちょっとした脱力感のようなものも感じた。
余りにも世の中が生き辛過ぎて自らこの世を去ってしまった「ねこぢる」と「妻」そしてドラッグ中毒の末に暴走して死んだ「青山正明」、そして残された山野一と吉永嘉明。
ねこぢる、山野一、青山正明、吉永嘉明など誰かの作品を好み、また彼らにシンパシーを感じる人にとって、この本を読むことは自分は誰の位置にいるのかが分かるような気がする、ちょっと恐ろしい本でもある。
amazonのレビューにもあるとおり、文庫版の精神科医による解説がぶっ飛んでいて笑ってしまった。
解説する対象である本と著者を全否定する解説なんか始めて読んだ。
この本を少しでも読みたいと思い、また実際に読まれる人は、是非文庫版を読むべきである。
この解説を読むことでちゃんと現世に戻ってこれるのだ。

2件のコメント

  • はじめまして。
    宮台さんのことを調べていたらたどり着きました。
    っとてもおもしろいブログだと思いました!
    私のブログにリンクしてもよろしいでしょうか?
    相互にしなくても大丈夫です。私がたまにお伺いしたいだけなので。
    よろしくお願いします。

  • どうもはじめまして、お褒めいただきありがとうございます。そう行って頂けると書いた甲斐と、これからも書いてゆくモチベーションができますです。
    もちろんリンクは大歓迎です。
    こちらからもリンクさせていただきます。
    私も相沢さんのブログを拝見いたしましたが、とーっても面白くて引き込まれて、思わず全部一気読みしてしまいました。
    性別も年齢もぜんぜん違いますが、なんかいろいろな所でシンパシーを感じました。
    また相沢さんのブログにもコメント差し上げると思いますが、こちらこそよろしくお願いいたしますですぞ。

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