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2007年2月24日

ポール オースター 『ティンブクトゥ』

ポール オースターの『ティンブクトゥ』を読了。
普通なら表紙を見た時点で絶対に読もうとは思わないけど、ポール・オースターと柴田元幸コンビ、あとネットでもそこそこ評判が良いようで読む事にした。
オリジナル版は1999年に、柴田元幸の手になる翻訳は2006年の9月に出版された。
内容は、はたから見ればただのホームレスに過ぎない放浪の詩人である主人に先立たれた犬が、犬の視点から世界を語り、殆ど意味を失った世界で新しい生き方を目指すというものやけど、動物が出てくるからといって「ほんわか系」ではなく、「世界の果て」という意味の原題『TIMBUKTU』が指し示すのが死後の世界である通りに、なかなかハードな物語である。
いや、見方によれば、ハードなのはラストシーンだけかもしれない。


『ミスター・ヴァーティゴ』で空を飛ぶ子供、『ティンブクトゥ』で人語を解する犬が主人公になり、子供も愛玩動物の主人公も私が好きな小説のタイプとは正反対であり、内向的で知的で限りなく暗い主人公はどこへ行った?という感もするけど、これはこれでおおありやなと思うようになった。まぁだからこそ読んでいるのだが。
それにずっと同じ地点に踏みとどまっている作家ってのもどうよ?というところもあるし、今まで読まなかった系統のものも読んでみるかというところもあるし、オースターが書いたので読んでみようという事もあった。
いきなり前半の前半の4ページで、主人ウィリーが死につつある事を確信している「ミスター・ボーンズ」が

迫り来る事態をミスター・ボーンズが恐れたのは、単に愛ゆえ、忠誠心ゆえではなかった。それは純粋に存在論的な恐怖だった。世界からウィリーを引き算してしまったら、おそらくは世界自体が存在をやめてしまうのだ。

という独白があって、ふむふむ、これがこの作品のテーマの一つになるのだろうと思っていたのだが、そこのところが掘り下げられるわけでもなく、ミスター・ボーンズがその存在論的な恐怖を克服するわけでもなく、そこだけは非常に残念であった。

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