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2008年6月11日

映画「地獄の黙示録」/キルゴア中佐の処世術/いつも心に太陽を

今回から映画エントリは映画の公開年や製作は文中に書く事にして、エントリのタイトルにそのエントリのテーマをちょっと混ぜる事にした。
この間「フッツカラルド」を観てから観たくなったフランシス・F・コッポラ 「地獄の黙示録 完全版」 (1979:オリジナル 2001:完全版 /米)を観た。
この映画は以前観た筈やと思うけど殆ど覚えていなかた。ということで殆ど初めて観たような印象やった。しかも完全版ということで3時間半ほどとやたらと長かったけど、殆ど退屈する事無く一気に観た。
キャリア街道まっしぐらの輝かしすぎる経歴を持つエリート将校が出世の望めない空挺部隊の訓令過程を願い出て、その男を高く買っていた軍から二度拒否されるも、三度の志願の後に受理されて特殊部隊となって泥沼の戦争と化していたベトナム戦争へ参戦することとなる。
ベトナムで戦っていたはずのその男、カーツ大佐は狂気にとらわれて暴走して蜂起し、カンボジア国境を超えた奥地に自らの王国を作り上げる。
そして、そのカーツ大佐を暗殺するために特命を帯びた特殊部隊のウィラード大尉は部下を率いて海軍の警備艇で川を遡上することとなる。
と言った所が大筋やけど、目的地にたどり着くまでの川の流域にある軍の拠点の話がロードムービーの如く語られる。
ベトナム戦争におかれた米兵の恐怖と狂気やベトナム戦争批判などの中々重いテーマが満載で、完全版となって第一次インドシナ戦争以前からベトナムでプランテーションを経営するフランス人入植者のエピソードなども追加される事になり、その上でカーツ大佐のエピソードも増えて、その重い側面は強くなっているらしい。
とはいっても、私の中でベトナム戦争ものの映画は基本的に喜劇と言うかお笑い映画である。


「フルメタルジャケット」がハートマン軍曹の映画であったように、この映画は私にとって強烈なハイテンションで次々と邪魔者をなぎ倒して行くキルゴア中佐の映画である。
彼が率いる編隊を組んだ戦闘ヘリ9台が、ベトコンの拠点の村を攻撃するためにワーグナーの『ワルキューレの騎行』を大音量で流しながら朝日を背に飛ぶシーンは余りに美しいし、アメリカ映画協会による名台詞・ベスト12位に選ばれているらしい、「I love the smell of napalm in the morning」と言う名台詞と共に敵兵が逃げ込んだジャングルをナパームで焼き払うエピソードは余りにも有名である。
絶対に被弾しない軍神的な存在のキルゴア中佐のぶっ飛びっぷりは素晴らしい。自らのヘリ部隊を騎兵隊と名付け、「DEATH FROM ABOBE」(天上からの死神/恐怖)ととペイントしたヘリに乗り、テンガロンハットを被り、死んだ共産側ベトナム兵に「死のカード」を配り、巨大な波の立つサーフィンのポイントを確保するためにベトコンの拠点の村を制圧する。
一見滅茶苦茶な用やけど、ちゃんと趣味と仕事を両立させているところが素晴らしい。被弾して死にそうなベトコンに敬意を払い、怪我したベトコンの村の幼児を病院に運んだり、部下や兵を助けるために危険を厭わないところも魅力満載である。
更に「はらわたが出るまで戦うやつには俺の水をやる」「石器時代に戻せ」など彼の台詞は隅々に渡って余りに冴え渡っている。
なんやろうねぇ。不謹慎バカ映画と捉えるまでもなく、このキルゴア中佐が率いいる「空の騎兵隊」の戦闘シーンに心踊らされる事のない男子はいないやろう。
言うまでも無く、事実上アメリカ側が敗北した共産圏と資本主義圏の代理戦争である「第二次インドシナ戦争」いわゆるベトナム戦争は空しく得るものの無いまったく不毛な戦争であった。
大義も何もないその戦争に参戦した現場の兵士たちに狂気と恐怖と虚無感がはびこったのは当然と言えば当然である。
カーツ大佐がダウナー系のベトナム戦争の狂気を象徴しているとすれば、このキルゴア中佐もアッパー系なベトナム戦争の狂気を体現した存在であるだろう。
暗くジメジメした方向へ突き進むカーツ大佐に引きかえ、趣味であるサーフィンの事を四六時中考えながらも、ちゃんと仕事はこなして、楽しく毎日を過ごすキルゴア中佐を見ていると、不毛な仕事とか人生の絶望とかに対する立場の取り方を学べるなぁ。などと思った。
うむ、「いつも心に太陽を」というのは大事やね。

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