新谷 かおる 『エリア88』
2009年4月6日
エリア88を全巻読み終わった。
もう古典ともいうべきなあまりにも有名な漫画で、外人部隊に所属する戦闘機乗りの傭兵の話、という予備知識のみで読み始め、当初は単純に戦闘機がドッグファイトするだけの話しかと思っていた。
しかし、植民地化からの独立した教育程度の低い国家の悩みや統治の難しさ、軍需産業を傘下に収める巨大企業による原油産出国の乗っ取りだの、外資による日本企業買収に対する防衛だの、国際政治や戦争やら経済がらみなどの渋い話もとても多かった。
当初は中東の王国の内戦の為に傭兵として戦争をしていたはずが、物語の終盤では「プロジェクト4」なる世界を股にかけた巨悪と戦うことになるのだが、エリア88の兵士達が直接的に戦争するだけで無く、シンの恋人とその友人たちも巨大企業として社会的に政治や経済の方面で圧力を掛けて戦っているところがとても熱かった。
戦闘機同士の対決から、傭兵たちの悲哀、そして国際政治や経済や戦争の問題まで、子供からおっさんまで楽しめる懐の深い本であった。
良い本の条件として、読後に自分の悩みや恨み辛みがあまりにもちっぽけに感じる爽快感。てなものがあると個人的に思っているのだが、この本の読後感もまさしくそんな感じだった。
しかし、ラストは予想以上に強烈で辛いものがあった。
私と同じくらいの年代の人は恐らく中学くらいでこの漫画を読んだことになると思うけど、もう一度読んでみると又違った感動があるはずである。
全国の傭兵諸君、傭兵としての誇りを持とうではないか。
いきつく先は
炎の地獄か血の海か…
高度計の針は
弱く震える…
ここはエリア88…