松本大洋『ピンポン』/ただ楽しむこと

amazon ASIN-4091847366久しぶりに松本大洋の『ピンポン』を読んだ。
以前、五六年くらい前に読んだ時はただ面白かっただけだが、今読むととても心に染みた。
風間はチームのため学校のため家族のために卓球を続け、佐久間はコンプレックスを克服するため、文革は祖国に返り咲くため、スマイルは何が自分を駆り立てるのか良く分らないままに打っている。
卓球自体を苦しみと感じ、行き詰まり追い詰められた彼らは、最後に卓球が楽しくて楽しくて好きで好きでしょうがない、一度は卓球を捨てたものの復活したペコと死闘を楽しむ事で救われてゆくのだが、
そんな様を見ていると私の中でも何か救われたような気がした。
そう。うだうだ理由や意味など考えずに、ただ単純に楽しめばいいのだ。
考えてみれば単純な話だが、糸口はそこにあったのだ。
「医者よ、あなた自身を助けなさい。そうすれば、あなたはあなたの病人たちをも助けることになる。自分自身を癒す者を、目のあたりに見ることが、病人のなによりの助けとなるようにすればいい。」
とニーチェが言っている通り、「卓球」を色々な物と置き換えて考えてみれば…


とにかく、単純にスポーツマンガとしても評価の高い作品であるし、キャラも立っているし、台詞も詩的だし、絵も雰囲気があるし、他の色々な意味でも素晴らしいマンガであった。
そして何よりも無駄に長くなく、さっと読み通せるところがなによりも良い。

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