柳澤桂子2冊/Yo観自在菩薩、無色声香味触法ポーーゥ、ぎゃーてーぎゃーてー
神谷美恵子のことについてネットで調べたり、彼女について書かれた文章を読んだりしていると、なぜか「柳澤桂子」の名前が良く出てくることがあった。
神谷美恵子が若いころから文学思想的な素養を積み重ね、また何度も死の淵を潜り抜け、紆余曲折を経たのちの中高年になってようやく若いころからの悲願であった「らい」と精神科医として関わるようになりその思索をますます深めていったのとは対照的に、柳澤桂子は若いころから順調に分子生物学者としての道のりを歩んでいたのが突如原因不明の難病にかかり、生物学者としてのキャリアを断念し、死を意識して初めて宗教や思想に目が向くようになったという感じであるようだ。
『生きて死ぬ智慧』は生命学者の最先端にある彼女が般若心経を最新現代科学で解釈した「心訳」といことであるらしいが、まぁ大まかに言えばクォークとかレプトンとかの素粒子論というよりは、質量保存の法則ベースに「空」を解釈した般若心経の解説交じりの現代語訳といったところである。
推定50万部のベストセラーであるようであるらしいが、なんというかこの本の中のような事を現に口に出してしまうと妙に中二病っぽく聞こえるなどというと怒られそうか?
「空」はどちらかというと科学でいえば基礎概念であるので、頭だけで概念として理解するだけなら比較的理解しやすいものであるような気がする。
「空」そのものよりも「空」から派生するところが難しいのだ。
そしてそうであるがゆえにわかったつもりになることが多いものの、自身の問題として自分に関わるレベルのものとして理解するのが難しく、またそういう理解でなければほとんど意味が無いような典型的なものであるように思う。
般若心経自体は昔からいろいろに解釈されて、色々な題材にされてきた。
たとえば、こういう風なボーカロイドが歌う般若心経やら
ラップな般若心経などいくらでもある。
このラップ調はなかなかクオリティー高いですな。
Yo観自在菩薩www
無色声香味触法ホーゥーwww
ぎゃーてーぎゃーてーww
しかし、それでも、「空」といえば大乗仏教の根幹を成す根本思想である。
中二病的にでも「空」思想が一般化して大衆化している世の中を見れば、やっぱり昔から比べて人間はある程度は精神的に進化しているんじゃないだろうか?と思ったのだった。
『いのちの日記』は『生きて死ぬ智慧』の次に書かれた、彼女が苦しみを経て特定宗教にこだわらない信仰を得た様を書いた本であるが、読んでいて彼女と同じような境遇で、また彼女とは違う境遇で、彼女のような、あるいは彼女以上の境地に至った人はほんとうに沢山いたのだろうなぁということをなぜかやたらとリアルに想像できた。
高い徳と智慧を積んだ誰にも知られない市井の人は本当に沢山いるに違いない。
そしてそんな人たちによってこそ、上に書いたような人間の精神的進化が後押しされたに違いないと思ったのだった。