ロビン ノーウッド『愛しすぎる女たちからの手紙』
一週間ほど前に読んだ『愛しすぎる女たち』の続編に当たる『愛しすぎる女たちからの手紙 』を読了。
この本は「手紙」って言うくらいなもんで『愛しすぎる女たち』が出版されてから著者に送られた読者からの手紙のいくつかに答える形で、色々な立場の人の症例や快復過程を「依存症」の見地から解説している。
前作は「恋愛依存症」やら「愛しすぎ症候群」なるものが病気であるという認識と、そこから快復できるという事実を提示する事に主な主題を置いていたような感じやったけど、前作がかなりベストセラーになってある程度著者の言う「恋愛依存症」のメカニズムが一般に理解と認知が広まったこともあり、続編であるこの『愛しすぎる女たちからの手紙 』では前作で述べられた事を前提として、その「恋愛依存症」やら「愛しすぎ症候群」から治癒した人、あるいは治癒しつつある人や治癒しようとする人についてを主題としている。
やたらと分厚い本なので全部読むのに結構時間がかかった。
前作では「こうである」といった「認識」にかかわる部分が主題だったのに対して、続編であるこの本では前作の認識を前提として「ではどうするのか」といった「対策」の部分を主題にしているわけで、前作で自分が病気であること、自分が異常であることはわかったけど、それはただそういう立場の見方から語ったことであり、そうでない状態、つまりは目指すべき具体的な「癒えた状態のイメージ」が掴みにくいという部分があったように思う。
続編は前作であまり言及されなかった「癒えた状態のイメージ」側から同じことを語っているわけで、癒えたいと望む人にとって「癒える」事を主題として読むことができる作りになっているように思われた。
一方でまたそれが難しく苦しい道のりであることと、ほとんどの人が依存症から脱することができない。というなかなかにショッキングな事実と、自分の心理構造がわかったからと言って癒える訳では決してなく、「認識する事」と「治癒すること」はまったく別の問題であることも著者は示しているわけで、依存症から脱することがほとんど奇跡に近いという著者の主張はよくわかったような気がする。
考えてみれば、癌や白血病なんかも昔はただの「不治の病」であり、ごく最近になって病気として扱われるようになったわけで、「境界性人格障害」「自己愛性人格障害」とか「共依存」「アダルトチルドレン」とかいう心理学的な「病気」にカテゴライズされる状態も最近になって出てきた概念で、昔は「個性」の範囲内に収まるもんやったと思われる。
著者のように、殆ど全ての原因を幼児期の体験に帰してしまうのも如何なものかと思わなくもないけど、こういった本で語られることが異常であり、その原因が幼児期の体験に根ざしていることが多く、そういった行為を受けることが後々どのような影響を及ぼし得るのかという今まではあまり一般的に認知されていなかった事が「癌と白血病は病気である」と同じくらいの自明な事実として社会に浸透する事は良い事だと思う。
そういう意味でこの本は、何らかの依存症に苦しむ読者にとって個人的な意義があっただけでなく、ベストセラーになったことで社会的にも一般的な知識として依存症やらのメカニズムを浸透させた意義が大いにあったようにに思う。