リンダ・グラットン『ワーク・シフト』を陰謀論として読むw
リンダ・グラットン『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』を読んだ。
普段から私はビジネス書だの自己啓発書だのといったものを全く読まないのだが、
この本は好きなブログの中の人がtwitter上で読書会的な事を行っていたので、
たまにはこういうのも読むべさーということで手に取った。
読みにくいということは無かったけど、特に引き込まれて読んでしまうということも無く、かといってめちゃくちゃ興味のある話というわけでもないので、結局全部読むのにそこそこ時間がかかったように思う。
この本をざっくりといえば、
- テクノロジーの発展
- グローバル化
- 人口構成の変化と長寿化
- 個人、家族、社会の変化
- エネルギーと環境問題
の5つのトレンドによって世界と人間の価値が圧倒的に変わってゆくので、そんな世の中を生き残るためには、
- ゼネラリスト→連続スペシャリスト
- 孤独な競争→みんなでイノベーション
- 金儲けと消費→価値ある経験
の3つのシフトが必要だという話であるであるが、
この本の一番のポイントは最初の5つのトレンドが未来へ止まることなく進んで行き、産業革命と同じくらいのレベルで、ゆるやかにではあれ世界に圧倒的な変化が起こると予測されているところであろうか。
その他の部分は、医療の進歩で人が死ににくくなり、IT技術の進歩で障壁としての時間と空間の垣根が低くなり、世界中が一つの市場になり、個人の意識や家族観や国家観や仕事観が変わり、石油の消費と二酸化炭素の排出が規制されて物理的な移動が難しくなり、価値基準が根底から変わりつつある世界で、そこそこ上流意識とか自己啓発的な属性を持つ人がいかに自己肯定しながら、かつ下層階級に落ちずにサバイバルするかという方法論という事になるように思う。
3つのシフトについては特に目新しいということは無い昔から言われている理想論のようなものであるけど、5つのトレンドが加速した2025年時点で、それぞれの3つのシフトを行えずに、貧困層に落ちて抜け出せなかったり、金や仕事はあれども孤独であったりむやみに忙しすぎて全く幸せでない人と、ちゃんとシフトを行ってルンルン幸せだーとされる人の未来像を具体的に小説のように具体的に描写してある。
で、ここからが感想になるのだが、普通に感想を書いても面白くもなんとも無いから、無理やり明後日の方向に話を進める。
つまり、本全体を通して受けた、なんか上手いこと「特殊」を「一般化」して語るなぁwwという印象だけを肥大させて妄想気味に語ってみる。
恐らくこの本は圧倒的に劣悪な環境で日々生き抜く貧困層を読者として想定していないので、社会的ヒエラルキーでいえば中層ちょい下くらい以上の階層の人の生き方の指針を提言しようという目的を持った本という事になる。
しかしながら、この本で言われていることは、昔の日本で、といっても1990年代半ば以降くらいから企業家や経済学者が階層として生まれつつあった非正規雇用の人間に対して言っていたことととても良く似ているように思うのだ。
今となればそれが安い労働力を確保するための経営論的な戦略であったのが明るみに出た。とされているわけであるけど、昔、バイトや派遣などの非正規雇用で働くことが、給与そのものは低くても何にも縛られず自由で夢を追いかけるのにベストな素晴らしい雇用体系だと様々なメディアでドラマまで作って宣伝していた時代があったのだ。
そして、この本では、世界は5つのトレンドで大きく変わるから、3つのシフトによって、自分で次々と別の専門技能を複数身につけ、自分で人とのつながりを作り、本当に「特殊」で自力で何かを出来るのでは無い人は沢山給与をもらって沢山消費するよりも、そこそこの給料で価値ある経験を生きる方が素晴らしい生き方です。と言っている訳である。
言い方を変えれば、もう「特殊」ではないゼネラリスト的な従業員に高いコストをかけることができないから、技能も人脈も社会や会社に頼らず自分で身に着けて手に入れて、それをフルに駆使して安い給料で働いて、あとは社会貢献して生きがいを見つければ人生楽しいよ。という事になる。
人間の根源的な理想とか欲求を持ち出して安く働くことの正当な理由をそれとなく押し付けようとしている。というと言い方が悪いけど、
なーんとなく、昔の日本がフリーターを大量生産しようとした時ととーっても良く似た論調であるなーと思ったのであった。むしろ単純に労働力として見るだけでなく、社会組織が果たすべき役割すら押し付けているあたり、昔に比べて若干大掛かりになっているようにもww
なにしろ、この本を書いたリンダ・グラットンなる人は、経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりとされ、 ロンドン・ビジネススクール教授であるらしい。
もう下層階級は骨の髄まで毟って何も出なくなりそうやから、こんどは余裕のある中層を…ついでに社会貢献という価値ある経験で企業や国家の変わりに社会保障的なものも担ってもらおうという経営論的な戦略なのだろうか?などというと陰謀論的過ぎるか??
などと、連続スペシャリストにシフトするほどゼネラリストでもなく、皆でイノベーションにシフトするほど孤独な競争をしているわけでもなく、価値ある経験にシフトするほど金儲けも消費もしていない私は思ったのであった。
まぁこの本を本気で読むタイプ人は私のブログなんか本気で読まないだろうからwwこんな感想でもいいだろうと思いつつも、これだけではあんまりなので、以下関連あるような無いような書籍を三つをなんとなく紹介。
- まず陰謀論について適当に選んだ本。
- この『ワーク・シフト』の著者リンダ・グラットン氏が前提としているマズローの欲求5段階節の反証となる、経済発展を成し遂げたわけでもなく高次の欲求である「国民総幸福」へ移行したブータンと、実は内情はそうでもないよーという話が書いてある本。
- そして最期は、密かに私が未来はこうなるんじゃないかと願望をこめて思っている、余りに予言的な村上龍の古い小説、『希望の国のエクソダス』。
そんじゃーね。うぇーぃ