岩井寛『人はなぜ悩むのか』

amazon ASIN-4061456938 以前に読んでとてもすばらしかった『森田療法』 の著者である岩井寛の『人はなぜ悩むのか』を読んだ。

この人は精神科医なのだが、様々な彼の患者さんの症例と同様に自分の体験もまったく同じように語ってしまうところが自然な感じでとても良い。

『森田療法』では若くして失った息子の死に顔を必死でスケッチする様や、死に臨んで失明状態でなお口述筆記する意義込みがなんともたまらなかったけど、この本では彼の語る精神史のようなものがグッと来る。

戦中に生まれ、思春期に敗戦を経験して今までの価値観が根本から崩れ、何かを探すように哲学や宗教の本を読み漁るものの心のよりどころを見つけられず、少し働いてみるも、好きなものを勉強したいと思い大学院に入って美学を勉強し始める。しかし今まで学んだそれらが西洋文明の一端でしかないことに気付き、今度は自らを取り巻く日本の伝統文化を学び始めるも、それら含めた全てはいわば人間の精神についての追求に過ぎないことに気付き、今度は人間の肉体について学ぶべく医学を学ぶことになる。

そんな彼の精神史は哲学とか宗教とかそんなものに興味がある人にとっては人事とは思えないジワジワ来る何物かがあるように思う。

そして彼は結果として哲学宗教美学や日本文化についてのバックボーンを持つ精神科医となったわけであるけど、彼のそんな精神的な遍歴を知ってみればこそ、彼の言う自らのあるがままを受け入れ、自分が今おかれている現在と悩みそのものと対峙する。という言葉が真摯に響いてくる。

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