ブリジット・オベール 『マーチ博士の四人の息子』

たまには趣向を変えてミステリなど。
ブリジット オベール『マーチ博士の四人の息子』を仕事から帰って一気に全部読んだ。
アマゾンでは

医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。

と紹介されている。
読んだ動機はもちろんこのアゴタ・クリストフが絶賛したと言う点。
確かに、帰った時間がそんなに早かったわけでもないのに一気に読んだくらいで、なかなか面白かった。


amazon ASIN-4151708014村上春樹の『風の歌を聴け』で好きなシーンに以下のようなものがある。

僕が時折時間潰しに読んでいる本を、彼はいつもまるでハエが蝿叩きを眺めるように物珍しそうにのぞきこんだ。
「何故、本なんて読む?」
「何故、ビールなんて飲む?」
僕は酢漬けの鯵と野菜サラダを一口ずつ交互に食べながら、鼠のほうも見ずにそう訊き返した。
鼠はそれについてずっと考え込んでいたが、5分ばかり後で口を開いた。
「ビールの良いところはね、全部小便になって出ちまうことだ。ワン・アウト一塁ダブル・プレー、何も残りゃしない」
鼠はそう言って、僕が食べつづけるのを眺めた。
「何故、本なんて読む?」

いまだに私が何のために本を読んでいるのかさっぱりわからんけど、少なくとも今読んだ『マーチ博士の四人の息子』は鼠がビールを飲むのと同じく「後に何も残らない」良さがあった。
読み終わったあとで鬱屈が増したり、ハイになったり、妙な決心をしてみたり。そんな気分には一切ならない。
上の鼠の言葉を読むだけで彼の真面目さだとか真剣さに胸苦しい思いがする。世界のあまりの無神経さに比べてみれば、人に質問して逆に質問されても必死に答え、答えた事で自分が質問をする資格を得たように思うような彼の感覚はなんとナイーブな事だろう。
そんな彼にとって心を乱されもしないけど、熱中もさせてくれるものというのは稀有なものに違いない。退屈はさせないけど押し付けがましくは無いものは本当に珍しい。
ミステリってのはそういう良さがあるやね。
って本の感想やないなぁ。しかも引用で逃げました…

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