ブリジッド オベール『カリブの鎮魂歌』
フランスの作家ブリジッド オベールの五作目の長編で1997年にオリジナルが発表された『カリブの鎮魂歌』を読了。
借りてきたその日の夜のうちに四分の三ほど読んで次の日の朝に残りを一気に読んだ。
以前に同じ作者の『マーチ博士の四人の息子』を読んでその感想をこのブログに書いたけど、それを某毒舌紳士が読んでくださっていたようで、ブリジッド オベールが好きだという彼に色々と教えてもらったのだが、彼が言うには、私の読んだ『マーチ博士の四人の息子』は一番面白くなく、一番いいのが『カリブの鎮魂歌』と言う事らしい。
んでは読んでみるかという事で一気に読んでしまったけど、毒舌紳士の某氏がこの著者の好ましい特徴として挙げていた「独特のユーモア感」がデビュー作の『マーチ博士の四人の息子』より色濃く出ていた。
確かに、某毒舌紳士の言う冗談に感じが似ている。例えば、こっそりつぶやく毒舌とか…
今時はジャンル分けをする事自体が時代遅れとなった感もあるけど、著者のブリジッド・オベールはミステリー、サイコ・スリラー、サスペンス、スラップスティックホラーと作品ごとに色々なジャンルで小説を書く人であり、この小説はハードボイルドな私立探偵ものということになる。
麻薬、銃、殺人、マフィア、そして私立探偵と依頼人の美女ということでこのジャンルの王道を行ってるのかな?
内容は結構エグいというか痛い。異常性のある猟奇的殺人の話になるから当然としても、これはあかんやろって人物の指が飛ぶし、もう日常的にボコボコのボキボキ。なんじゃそれやりすぎやんというくらいに人が死にまくる。
血なまぐさくて暴力的やけど、なんというか不思議な品の良さが漂ってるような気がする。というてもマルキ・ド・サド的な上品さやけど。
なんというかこの作者がやるような、持っている知性とか知識とか美意識とかユーモアを中途半端な純文学としてではなく、エンタメ系の方向性で使おうとするのを見ているととても気分がよい。
まぁまぁ面白い佳作映画とか言われるのを見るくらいならこういう細かく気を使われた質の良いエンタメ本を読むほうがよっぽど良いやと思った。