都筑 卓司 『四次元の世界―超空間から相対性理論へ』

amazon ASIN-4062573806都筑 卓司『四次元の世界―超空間から相対性理論へ』を読了した。
初版は1969年とかなり古く、私が読んだのは2002年に出た新装改訂版である。
更にはなんとなく微妙なタイトルやけど、新装版が出るだけあって、ブルーバックスの中でも中々有名で、名著の扱いを受けているほどである。
著者は以前読んだ『マックスウェルの悪魔』と同じである。内容はタイトルどおり四次元とはどういうものであるかを表現し、そこからアインシュタインの特殊相対論と一般相対論の骨子が説明されている訳やけど、さすがに有名な本だけあって文章が絶妙で例えも判りやすい。
巷に溢れる相対性理論を解説する「相対性理論本」の類であるけど、やはり一味違う本でもある。


前半、半分まではこれでもかと「次元」に関する話が繰り返される。3次元空間に住む我々が四次元で表現される「空間」を直感的にも作図の上でも絶対理解できないことが読者に叩き込まれた後に、非ユークリッドな幾何学系、時間軸を交えた系、光速度不変と特殊相対論が説明され、一般相対論の重力場と空間の歪みが説明される。
流れるように見事な論の運びでとてもわかりやすくて感心するけど、この本の特徴は時間を含めた軸がどういう風なものであるのかに説明を多く割いていたのと、一般相対論の重力場に寄る空間の歪みによる距離の短絡や伸び縮みを、三次元空間が四次元目の軸方向に傾いたものとして説明してあったところにあるように思う。
日常的には限りなく近似値的な3次元に住む我々に対して、我々の世界が実は三次元でなく光速度と時間と虚数を掛け合わせたiCT単位を軸に取るもう一つの軸を合わせて4次元になっていることが説明されるわけやけど、こういう風に世界の本当の姿を描いて見せることで、「世界は判らん事だらけやん、絶対俺には理解できん。もう何やっても一緒…」と不安をあおったり足元をすくうのではなく、「そうか世界はなんとスバらしいのか。ここに私が在るという事は幸せやん」という雰囲気に持って行くのは中々いい感じである。これも著者のお人柄と世の中の捉え方が出た結果であろう。
最後のエピローグで、色々な紆余曲折を経た男女の出会いが、ただの三次元で起こった出来事ではなく、時間軸の方向を一つ加えた次元の一つ高い事であると力説される様は「これほんまに相対性理論本か?」と笑ってしまいつつ感心する事請け合いである。
そしてしめの言葉は「宇宙を眺めてその広さに驚くならば,時の流れの悠久なるさまにも,畏懼の念をもって接しなければなるまい。」といい感じである。
ただの相対性理論本でない変な面白さがあるのはこの辺のお陰であろうと思った。

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