毎年この時期になると思いだされる村上春樹
2008年10月9日
今年も村上春樹はノーベル文学賞を逃した。きっと彼は「そうかもしれない日本の私」なる記念講演の原稿を書いて待っていたに違いない、あるいは、あえて空気を読まず「~~日本の私」以外のテーマで来たかもしれない。
はたまた関西生まれ関西育ちの彼の事であるから、川端康成の「美しい日本の私」、大江健三郎の「あいまいな日本の私」と来た次に壮大な三段落ちを持ってくる事も期待できよう。
何れにせよとても残念である。彼がノーベル賞を取れば、「エロ小説家」「ただの流行作家」などという罵声を浴びながらも頑なに読み続けて来た甲斐が実り、堂々と胸を張って昔からの村上春樹好きを公言できるってものである。
来年こそは!
村上春樹の小説に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 』という小説がある。
その中で、「やみくろ」なる怪しく不気味な存在の支配する地底の奥深くを歩きながら、恐怖やら絶望やらと戦う武器として楽しい事を考えるために、主人公の連れのピンクが良く似合う女の子が「自転車の唄」を歌うシーンがある。
詳しくは書かないけど、ちょっと理不尽なくらいに悲惨な状態の中の地底の奥深くで、ピンクの服を着た女の子がピンクの自転車に乗って森に出かける唄を歌うシーンのなんと美しい事か。
そのあたりのシーンは私が色々な小説を読んで来た中で、最も好きなシーンの一つである。
このシーンのお陰で私は村上春樹を読み続けていると言っても良いと思う。
現在は凄い長編を書いているらしく完成が楽しみである。