「こやつ、やりおるわ」

最近ずっと『カムイ伝』を読んでいて、その中の登場人物の一人の台詞「こやつ、やりおるわ」というのが妙に気に入っている。
これは自分の方が上手だという含みを持たせながら、善戦する相手に余裕たっぷりに言う台詞なのであるが、これを事あるごとに頭の中で呟いている。
例えば、帰宅中の坂道の上りで私の自転車を電動自転車で追い抜いて行くおばちゃんに対して「こやつ、やりおるわ」、ご飯を食べていて中々つまめずにつるっと逃げる豆などに「こやつ、やりおるわ」などなど。
本当は完全にやられているのに、限りなく負け惜しみに近い状況で使うと、イライラしたり落ち込んだりせずに精神衛生上楽であろう。
そしてこの日は雨、例の如く私はレインスーツを来て自転車で出勤、帰りも雨の中レインスーツ。行きも帰りもべちゃべちゃである。
で、仕事帰りの土砂降りの雨の中で信号待ちをしていたら、目の前の車道を凄い勢いでママチャリで駆け抜けて行く高校生らしき制服を来た女の子、傘も差さずにずぶ濡れで凄い形相で車の流れに乗っている。
状況的には「こやつ、なかなかやりおるわ」と言いたいところであるが、女の子の発するあまりの気迫に、心情的には「むむ、ぬかったわ」というところか。
「こやつ、やりおるわ」は潜在的に「むむ、ぬかったわ」を含んでいると思ったぐしょ濡れの日であった。

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