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2008年1月25日

北野武 「ソナチネ」(1993/日)

この「ソナチネ」の公開当初は1週間で上映が打ち切られる映画館が出るほどの人気の無さやったけど、欧州に輸出されて、イギリスのBBCの「21世紀に残したい映画100本」にも「東京物語」や「椿三十郎」などと並んで選ばれほどの熱狂的な人気を得た。日本でもとりわけ北野映画をバイオレンス映画として観る向きの人の評価が高いようだ。
ストーリーはヤクザ稼業がちょっと嫌になって来た男が親分の依頼で、繋がりのある組が巻き込まれている抗争を収拾すべく手下を引き連れて沖縄に向かうも、彼たちが来た事で抗争はより激化し、彼らは海辺の家で暑い日差しと碧い海に囲まれて、来るべき「何か」を待つ。というもの。
前々作の「3-4X10月」の発展系と言う位置づけのように、たけしが演じる男のキャラクターと突然訪れる暴力描写と死は健在である。「3-4X10月」でのたけしの演じた強烈な利己性を持った男の役柄の利己性はかなりまろやかになったけど、有名なリボルバーの銃口を頭に突きつけるシーンで感じるような狂気はよりいっそう強烈に強くなっている。
「3-4X10月」では暴力性がとても強く印象付けられたけど、この「ソナチネ」は暴力性よりも「死」の雰囲気がとても強く深く漂っている。暑い日差しと青い海と空といった沖縄的で夏的な雰囲気の中であっけなくあっさりと人がバタバタ死んでゆく様は余りに違和感が無く、夏的な雰囲気とその「死」が不思議なくらい上手く溶けあっている。「キタノブルー」と呼ばれる「青」の色使いも確かに印象的である。
この映画に監督の「死生観」が強く反映されているというのが良くわかるような気がする。


結婚式で深く死を思うように、友人たちやビキニの女の子達と夏に海ではしゃぎ回るシチュエーションに死を感じずにはいられないように、暑い夏と海と空といった絶対的な生の楽しみにその逆の死を深く思う感覚はとてもよく分かる。素潜りで海に潜って水圧を感じながら銛を構えて魚を狙っている時に感じるものはそれを一人の方向にシフトさせたものである。それらは日常をちょっとだけ踏み越えた先に無限に広がっている世界でもある。と私は思う。
そういう意味でも、この映画のパッケージ画像である、ダイバー達の一二を争う人気魚であるナポレオンフィッシュが、水中銃のシャフトに貫通されているという、ミーハーなスキューバーダイバーなら発狂しそうな「矢ガモ」的なニュアンスのある図柄はとても象徴的である。
ハコフグだけは可愛すぎて撃てないけど、マンタだろうがナポレオンだろうが水中で出会えば容赦なく銛を撃ち込むぞと密かに思っている土偶にはなんとなく複雑な気分にさせる画像である。
「鬱映画」と言われるように、奥の方に深く突き刺さるようなとてつもないダウナー系映画であった。

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