マーティン・スコセッシ「シャッターアイランド 」(2010/米)/妄想なんてフヒヒヒヒ

年末に「妄想系」の映画を2本見たので順にその感想を。
amazon ASIN-B002M3UEPOまずはマーティン・スコセッシが監督しディカプリオが主演している「シャッターアイランド 」(2010/米)である。
第二次大戦後、孤島に建つ犯罪者用精神病院で消えた患者の謎を探るために連邦保安官が島に降り立つ。
島と病院を取り巻く不穏な空気、そして謎の頭痛に翻弄されながら、保安官は病院の謎に迫る。
という感じのストーリーである。
私は「タイタニック」を見ていないのだが、冒頭でディカプリオが船酔いしているのがちょっと可笑しかった。
映画としてはリアル路線を突き詰めてとてもリアルでシリアスな作りに出来ているのに、「統合失調症」に関してはあまりリアルではないのではないかという気がした。
笠原嘉によれば統合失調症は現実と妄想の「二重帳簿性」が特徴的だということであるが、この映画の場合は「二重帳簿」ではなく「帳簿入れ替え」な感じであった。
いや、しかしこれは逆にこの1950年代の「統合失調症」が「精神分裂病」と呼ばれていた時代の、ロボトミー手術が画期的で革新的な治療法であった時代の精神病患者に対する偏見的な視点でもあるという意味でリアルなのかもしれない。


この映画は妄想と現実についての映画であった。そしてそれはこの映画の中では精神病性と正常性という区分で分けられていた。つまり、妄想するのは精神病、しないのは普通というわけである。
しかし、精神病的な傾向は多かれ少なかれ誰でも持っており、「統合失調症」は100人に1人は発症者がいるというポピュラーな病気である。
そういった精神病的な傾向が治療の対象とされる病気であるとされるのは、結局その傾向が、本人や他人の日常生活に支障をきたすかどうかの話だという。
妄想と妄想の主が人畜無害であったら、少なくとも他人の日常生活には何の支障もきたさない。
この物語の誇大妄想の主は、人間的にも妄想の内容も、余りにも他人や本人に害を及ぼすほどに危険だったから、その妄想に対処するために治療の必要があったという事になる。
狂気と正気の狭間は思ったよりも分かりにくいし、意外に我々はその近くに立っている。
本人も他人も気付かないうちにその境目を行ったり来たりしている事もあるだろう。
人間の正常と以上の境目などその程度のものなのだ。
というわけで、
妄想は害の無いように「フヒヒヒ…」とこっそりしましょう。
そしてその「フヒヒヒ…」をリアルな世界に持ち出してはいけません。
そこを守っている限り大丈夫。
というお話でした。
人間なんてラララ~ララララ~ララ~♪
妄想なんてフヒヒ~ヒヒヒヒ~ヒヒ~♪

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