都築響一/『珍日本紀行』と『珍世界紀行 ヨーロッパ編』と『巡礼~珍日本超老伝~』/現実と地続きの非現実

都築響一の本を三冊ほど読んだ。
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『珍日本紀行』と『珍世界紀行 ヨーロッパ編』と『巡礼~珍日本超老伝~』である。
前の二冊は、メージャーでメディア露出の多いような場所ではなく、マイナーではあれど妙にエネルギーに満ちているような場所が紹介されており、最後の一冊はそして世間の価値や視線から孤立して、正常と異常の境目すらあいまいに思える独自の世界を極めて来た老人たちが紹介されている。
amazon ASIN-4575299553例えば、ヨーロッパ各地の蝋人形館、拷問や奇形や寄生虫や人体の博物館、骸骨ばかりの聖堂や、カトリックの聖地、そして日本中にある不思議な博物館や神社や寺やテーマパークのようなもの、そして一人で城を作り続けていたり、カラオケ好きが高じて歌手デビューしてしまったり、ボランティアで交通整理を続けていたりする老人などが紹介されている。
通常、旅行や観光で人々が訪れる観光名所、あるいはとてもオリジナリティあふれる趣味に打ち込む人を紹介する場合、普通はどれだけ日常や現実から離脱したり超越しているかという所に視点があてられていることが多いと思う。
そして一般的に旅行を重ねたり趣味を突き詰めてりして、それらにのめりこんでゆくというのは、多くの場合、非現実の妄想世界や別世界をリアルにしようという試み、あるいは現実的なリアルを妄想世界や別世界に近づけようとする試みであるとされることが多いように思える。
しかし、この本に出てくる場所や老人たちは、このようにどれだけ現実から超越してどれだけぶっ飛んでいるかという方向性で紹介されるのではなく、それとは全く逆に、どれだけぶっ飛んだ妄想世界や別世界が現実そのものに組み込まれているかという方向性と視点でもって紹介されているように感じられるのだ。


この本で紹介されている場所は一見あまりにも日常からかけ離れていても、その根源から感じるものは泥臭くて明らかに日常的な欲望や叫びの延長線上にあったり、時には日常のデフォルメそのままであったりするし、この本で紹介されている老人たちは自分たちが長年打ち込んできた独自の世界を、妄想世界や別世界内ではなく実に巧みにリアルな生活の場に結実させている。
なんというか、彼の本を読んでいると、我々の世界とは全く関係なしにぽっかりと独立して浮かんでいるようにしか見えないどんなぶっ飛んだ妄想や誰も理解できない世界も我々のいる日常も、全ての聖なるものや俗なる物、醜いものから美しいものに至るまで、全は現実から生まれたもので、全ては地続きであるという妙な安心感を感じるような気がするのであった。

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