レベッカ・ブラウン 『家庭の医学』

レベッカ・ブラウンの『家庭の医学』を読了。
この間読んだ同じ作者の『体の贈り物』がHIV患者のホームケア・ワーカーの話だったけど、今回は末期癌となった母を介護する話。
母の体調が悪くなって病院に行き、癌である事、転移してすでに手遅れであることが判明し、様々な延命治療や緩和治療を施し、ホスピスで死を看取る、というところが語られる。
前作と同じような淡々と感情を表さない語り口が読む者の心を揺さぶる。といったところか。
親の死や看護などというものは、突発的な何かで自分自身が死んでしまわない限り避けて通れないものであるからして、末期癌というところは別にして、この本のテーマはほぼ誰にでも該当して関係することであろう。


amazon ASIN-4022577983この『家庭の医学』と依然読んだ『体の贈り物』はどちらも著者の体験を綴ったノンフィクションということになっているらしいけど、小説家である著者にとって小説という形が一番身近な表現形式だったのやろう。
私自身はノンフィクションで本当にあった出来事だから凄いとか、フィクションだから凄くないとか言う考え方は全く持っていないので、著者の経験が感性やら思考のフィルタを通って小説になったこの本は、純粋な物語や小説としてみた場合でも見事だと思う。
また、細かく分けられた各章に「幻視」やとか「転移」「化学療法」などという名前がついて『家庭の医学』というタイトルの由来になっているように、各章のテーマをはっきりさせて物語る構成というのも、各章のテーマを一点に絞れるだけあって、純粋で一本気な雰囲気を醸し出しているのだろう。
前に読んだ『体の贈り物』同様この本も良い奴しか出てこなく、遺族が遺産相続を巡って争ったり、看病する娘にコップを投げつけたりという修羅場も当然無い。
ファンタジーはファンタジーやけど読んで損は無いだろう。
というか、こういう風に親を見送ることが出来ればどれだけ良いだろうなと思った。

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