阿部和重 『プラスティック・ソウル』

阿部和重 『プラスティック・ソウル』を読んだ。
1998年から2000年までの連載小説が2006年3月に単行本化されたもので、明らかに芥川賞を取った後の阿部和重需要が上がったために世に出ることとなった本のようである。
この連載中に「シンセミア」の連載が始まったこともあって、とても苦しんだ連載だったようであり、阿部和重自身がこの本の出版を渋り、あまり自身のある作品ではないといっているところは巻末に詳しい。
で、その内容は毎日引きこもってドラッグ漬けになってセックスばかりしている、作品を一つも書き上げたことの無い作家志望のどうしようもない男の話。
妄想癖が激しく、何一つとして物がまともに覚えられない、テレクラ通い以外には一つの事を続けられたためしの無いその男がメインの語り手である故に、物語の本筋がつかめず、どこまでが妄想でどこまでが本当かがわからず、膨らみかけた複線も勝手にしぼみ、メインの本筋も自然消滅する。


amazon ASIN-4062102609タイトルが『プラスティック・ソウル』と言う事でか、本のカバーまでプラスチックが使われている。
さらにカバーだけに著者の名前と影つき文字になった前景タイトルの文字だけが印刷されているのでカバーを外すと作者名は消え、影部だけのタイトルは文字が潰れて何の本だかわからん。
深読みさせようという意図の装丁なのはわかるけど、ここはその装丁に関して「華麗にスルー」すべきだろう。
巻末で著者自身はこの物語を「僕にとっての一種の切断線」であるといっており、それは著者自身が言っているように、物語の背景であるべき「手法」的な部分が前面に出て、前景であるべきストーリーが後ろに後退している形の作品から次のスタイル、つまりは『シンセミア』的なものへ移り変わる境目にこの作品は位置づけられると言う事やと思う。
なぜか読んでて連載小説って大変やなぁと思った。
全然本の感想ではないけど…

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。

PAGE TOP