イタロ・カルヴィーノ 『不在の騎士』

私にとって1959年に発表されたこの『不在の騎士』が初イタロ・カルヴィーノとなる。
1923年に生まれて1985年に没した彼は、20世紀イタリアの国民的作家と見なされているらしい。
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中世騎士道の時代、シャルルマーニュ麾下のフランス軍勇将のなかに、かなり風変わりな騎士がいた。その真っ白い甲冑のなかは、空洞、誰も入っていない空っぽ…。『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』とともに、空想的な“歴史”三部作の一作品である奇想天外な小説。現代への寓意的な批判を込めながら、破天荒な想像力と冒険的な筋立てが愉しい傑作。

と紹介されている通り、昔ながらの中世フランク王国の十字軍を舞台にした騎士道の物語で、登場人物から設定から世界観から語彙といたるところまで中世的な物語である。


amazon ASIN-4309462618空っぽの白く美しい鎧だけの存在、或いは強い意志だけ非存在の存在である「不在の騎士」たるアジルールフォ。その従者である、鴨を見れば鴨に、スープを飲めばスープに自分を同一化してしまうグルドゥルー。
その肉体的な存在は無である強い意志だけの存在であるアジルールフォと、自分という意識を持たない肉体的な存在でしかありえないグルドゥルーの対比が際立つようになっていたけど、余りに人間臭く、余りに感情臭漂う『ペテルブルグの文豪』を読んだあとでは、寓話臭く説教臭く仄めかしとわかりやすさに満ちたこの物語がなんとなく鼻についた。
中世騎士道の物語とかを殆ど知らん私にとってはキャラ付けがイマイチわかってないこともあり、この話の面白さが半減していたのかもしれない。
半身浴をしながら一気に二時間半で読んだせいかもしれんけど、リアリティーを露ほども感じなかった。
考えてみればこの本にリアリティーを追求すのは間違いなのかもしれない。中世騎士道の寓話的で象徴的な御伽噺として読まなかったのが間違いだったのだろう。
『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』とあわせてこの本が「自由へと至る三段階」を表す最初の一作であると著者自身が述べている事と、アジルールフォとグルドゥルーの設定の事の二つから、読む前から過剰な期待をしすぎていたようだ。
能書きの多い奴ほど…とは言いたくないけど、本の感想ではなるべく否定的な事を書かないようにしてきたつもりやったけど、そうなってしまって残念。
いずれにせよ、なんか単純に物語を物語として楽しめなくなったのを感じた。

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