柏祐賢 『学問の道標―学究者におくる』

柏祐賢 『学問の道標―学究者におくる』

先日某レディがちょっと思いつめた顔で「大学の先生を目指すわけでもないのに修士や博士で必死で勉強している人たちが何をしたいのか何を目指しているのかが全く理解できない」と言ったのだが、今までちょくちょく研究室に来る学部生にそういうことを聞かれた事があったけど、そういう疑問自体に久しぶりに接したような気がして逆に新鮮やった。 「彼らのお陰で、知的な意味で世界が利益だけを価値としてては絶対進まん方向に進歩[…]
ブリジッド オベール『カリブの鎮魂歌』

ブリジッド オベール『カリブの鎮魂歌』

フランスの作家ブリジッド オベールの五作目の長編で1997年にオリジナルが発表された『カリブの鎮魂歌』を読了。 借りてきたその日の夜のうちに四分の三ほど読んで次の日の朝に残りを一気に読んだ。 以前に同じ作者の『マーチ博士の四人の息子』を読んでその感想をこのブログに書いたけど、それを某毒舌紳士が読んでくださっていたようで、ブリジッド オベールが好きだという彼に色々と教えてもらったのだが、彼が言うには[…]
トマス ピンチョン『競売ナンバー49の叫び 』

トマス ピンチョン『競売ナンバー49の叫び 』

某毒舌紳士をして「アメリカ文学の旗手のような言われ方をしている割に、限りなくつまらんかった」と言わしめた作者である。 そこまで言われるからにはぜひともこの作者の作品を何かを読もうと思ったまのではいいけど、ネットの評判を見るに確かに敷居が高そうだ。原色の幻視な視覚的サイケデリック肉体感覚な感じ? で、このトマス・ピンチョンなる作家の作品で一番最初に読むものとして、正攻法では代表作的な扱いを受けている[…]
岡田 暁生 『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』

岡田 暁生 『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』

寝る前にちょっと読みを繰り返す事数日で半分を、お風呂で半身浴しながら残り半分を読んだ。 著者は19~20世紀音楽が専門の、現在は京都大学人文科学研究所の助教授である。書いた論文のタイトルを見る限り、リヒャルト・シュトラウスやオペラが好きなようだ。 本のコンセプトとしては「まえがき」にあるように音楽の素養が全くない人でも平素に読み通すことの出来る、作曲家個人や個々の作品には深く立ち入らない、当時の時[…]
マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』

マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』

長い時間を幾日もかけて700ページ近くにも及ぶ長編、ブッカー賞作品であるマーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』を読了。 妹のローラが車ごと橋から転落し、夫がヨットの中で、娘が汚いアパートの階段から転げ落ちて死ぬのを語るところから物語が始まる。 ボタン製造業で財を成した裕福な家庭で育ったアイリスが語る自分と妹の人生、そして老齢を迎えたアイリスの語る現在の寂しさ、妹のローラが書いた作中作としての「[…]
スティーヴン ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』

スティーヴン ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』

スティーヴン ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』を読んだ。 作者は1943年生まれのアメリカの作家であり、1972年に書いたこの作品でデビューした。 小さい頃から利発で秀才とも呼べるジェフリー・カーライト少年が11歳の時に書いた、彼の隣の家に住み兄弟のように育った、10歳で不朽の名作『まんが』を著して11歳で夭逝したエドウィン・マルハウスについて伝記である。という設定の小説。 11歳の生涯が、[…]
ピーター・F. オストウォルド『グレン・グールド伝―天才の悲劇とエクスタシー』

ピーター・F. オストウォルド『グレン・グールド伝―天才の悲劇とエクスタシー』

ここ最近のちょっとした引きこもり生活で質と量ともにヘビーな本ばかり読んでおり、日常への緩衝地帯のようなつもりで、軽く伝記でも読むか。 という事で、ピーター・F. オストウォルド『グレン・グールド伝―天才の悲劇とエクスタシー』を読み始めた。 好きなピアニストであり、伝記でもあり、気楽なつもりで読み始めたけど、内容はかなりヘビーである。 病気、手への怪我、群集、他人、など色々なものに対する強迫観念を持[…]
ミゲル・デ・セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ 後編』

ミゲル・デ・セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ 後編』

ミゲル・デ・セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ 後編』を読了。 前編が出てから10年後に出版されたこの後編は、前編で家に連れ帰られたドン・キホーテが再びサンチョ・パンサと共に旅に出る話であるが、前編を読んでドン・キホーテ主従を知っている人が作中に沢山現れるという構造をなし、当時出回ってた続編が偽物であることを知らしめようとするセルバンテスの意図も多分に含まれている。 物語の殆どはその前編のファンで[…]
ウィリアム・ギブスン 『ニューロマンサー』

ウィリアム・ギブスン 『ニューロマンサー』

ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』を読了。 1984年に発表されたサイバーパンクなるジャンルや流れを作り出したSFの古典であり、SFの文学賞を多数獲得しているように人気や影響力は高く、SF小説に限らず後の様々な作品の原型となっている。 そっち系に特に思い入れがあるわけでもなく、全く詳しくない私でも、マトリックスという名のサイバースペースと聖域としてのザイオン、脳に直結された埋め込み式のプラグ[…]
ミゲル・デ・セルバンテス 『新訳 ドン・キホーテ 前編』

ミゲル・デ・セルバンテス 『新訳 ドン・キホーテ 前編』

現在でも比喩として使われる事の多い古典中の古典、ミゲル・デ・セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ 前編』を読了。 騎士道物語の読み過ぎで頭がおかしくなって自分を騎士だと思い込み、世の中の全てを騎士道物語の世界に置き換えて見る中年から老年にさしかかろうとする地方貴族「アロンソ・キハーナ」が「ドン・キホーテ・デ・ラマンチャ」と名乗り、痩せた駄馬「ロシナンテ」に跨り、皇帝になったあかつきには伯爵にしてやる[…]
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