映画:「黒いオルフェ」/メメント・モリ

amazon ASIN-B00006GJIA「黒いオルフェ」(1959/仏=ブラジル)を観た。
「黒いオルフェ」で有名な「カーニバルの朝」という曲を初めて聴いたのは、オリジナルのボサノバでもスタン・ゲッツでもなくMJQの「シェリフ」というアルバムであった。
この曲が映画内で使われたものであることを知って興味を持ち、その映画を深夜枠のテレビで観たのは十五年くらい前やけど、半分寝ながら観たせいか、なんかやたらみんな踊っているだけで中途半端な映画やなぁという印象しか残っていなかった。で、この映画がそれなりに名作のような扱いをネット上でされていることが多いことを知り、レンタル屋さんで見かけて久しぶりに観たくなったので借りてきた。
ストーリはカーニバルに沸いたブラジルのリオデジャネイロに、殺意を持っているらしい男から追われて従妹を頼って逃げてきた来たユリディスという女の子が、ギターと歌が上手でモテモテの別の女性と婚約したばかりのオルフェウスという男に恋をする。といったものやけど、タイトルや主人公とヒロインの名前、冥界に下ったりマイナスに襲われたりするオルフェウスのエピソードのとおり、ギリシャ神話のオルフェウスの物語をモチーフにしているようだ。


ヒロインを追っているのはいわゆる死神の比喩なんはわかりやすい。
結婚式や飲み会ではしゃいでいる時に逆に死を意識することは良くあるけど、それ以上に作中の妙に突き抜けて高いカーニバルのテンションと、ヒロインを追う不気味な男から色濃く漂う死の雰囲気の一体感はまさに「死を忘れるな」とも訳される古来から芸術のモチーフにされることの多い「メメント・モリ」な雰囲気を良い感じに醸し出していた。
最初から最後まで途中で歌われる歌も世の悲しさと一時の楽しさを歌うものが多かったし、カーニバル中に走り回る救急車も印象的である。一年の稼ぎを一日で使い果たすほどの熱狂を見せるリオのカーニバルの勢いが強ければ強いほど、同じ絶対値を持つ死もまた強く意識されるのだろう。
熱狂的なカーニバルと恋に対する死神と死がとても近い表裏一体のものであるとして描かれているあたりが、ただのブラジリアン恋愛映画で終わらない底力となっているような気がした。
しかし、この映画を額を割った日の夜に見たのだが、さすがに自分のこんな状況と起こった事を考え合わせて、女の子が死神に追いかけられるのを見てるのは気分のいいもんじゃなかったなぁ…

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