映画:岡本喜八「赤毛」 / 三船敏郎主演の非侍三船映画

amazon ASIN-B000BVKFTO岡本喜八が監督した「赤毛」 (1969/日)を観た。
刀を持った三船敏郎が主演でかつ岡本喜八が監督と言う事で、レンタルやさんで見つけて喜んで借りてきた。
江戸時代の最後の年、京へと進軍する官軍赤報隊の部隊長から、故郷の町の先方に隊長として赴く許可を得た百姓侍は、隊長の証である赤毛を被って意気揚々と乗り込む。
しかし、時代は江戸から明治に変わろうとする中、昔と同じ悪代官と悪徳商人は百姓を搾取している。
怒りに怒った赤毛の隊長である百姓侍は、官軍の部隊の隊長として、虐げられる人々を解放し、悪徳商人と悪代官に報復を加えようとするが、同時に町に潜り込んでいた官軍を討とうする組織も活動を始める。
という感じのストーリーである。
見終わった後にネットで調べてみるとやたらと評価が高い。
あんまり詳しく書くとネタバレるので詳しく書かないけど、確かに過去に見た「肉弾」や「血と砂」などの岡本喜八映画と同じく、時代の流れに否応なく巻き込まれる一兵卒や一般市民の悲しさをひしひしと感じさせる映画であった。


主演は三船敏郎やけど、周りの脇役が例外なく良い感じである。みんながみんな典型的なタイプとしてキャラが立ちつつもしっくりきていて何ともすばらしい。
三船敏郎は大根やとよく言われるけど、確かに上手い脇役たちと演技している彼の演技はやたらわざとらしく大げさに見えた。
素浪人なら棒読みでわざとらしい台詞回が渋く見えても、隊長がそうあってもそう見えるとは限らない。
この映画の脇役が良かっただけに逆にその三船敏郎の大根っぷりが目立ったような気がする。
三船敏郎は大根であるのが問題にならないくらいの華があるけど、大根であること自体がいいことであるはずない。
観る前から赤毛の三船敏郎がばたばたと刀で人を薙ぎ倒す様を期待してこの映画を観た。
しかしながら彼は明らかに剣の達人に見えず、ただのお調子者に見える。主役の彼はあまり表に出ず、殆ど刀を抜くこともなく、脇役中心で話は進む。
確かに、映画としてはとてもおもしろかった。岡本喜八らしい悲壮感あるコメディーだった。
しかし、三船敏郎が大好きな私にとって、三船敏郎は無闇に強くて無駄に刀を振り回しているべきなのであるし、そういう意味で、この映画は三船敏郎のチャンバラ映画としてはいまいちだった。彼が人を斬るどころか、そもそも刀を抜くシーン自体がほとんどなかったのだ。
ディズニー映画、ハリウッド映画など、一つのジャンルを構成する要素があるけど、この映画を観るにつけ、三船敏郎の侍は、侍三船映画という一つのジャンルを構成する一つの要素やねんなぁとつくづく思った。
この映画は映画としてはとてもおもしろかったけど、三船敏郎が好きなだけに侍三船映画としてはいまいちに感じた。
それでも三船敏郎が特に好きだということはない人にとってはおもしろい映画であろう。

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