映画:「ヴァージン・スーサイズ」 / 見た目が10割 / この橋渡るべからず

amazon ASIN-B00005HTH1ソフィア・コッポラのデビュー作である「ヴァージン・スーサイズ」(1999/米)を観た。
原作は中々有名な本である『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』であるけど、映画の邦題は原題そのままの「The Virgin Suicides」となっている。監督のソフィア・コッポラはゴッドファーザーと地獄の黙示録のフランシス・フォード・コッポラを父に持ということでデビュー当初は明らかに親の七光り的な扱いをされたらしいけど、「ロスト・イン・トランスレーション」(2003年)、「マリー・アントワネット」(2006年)の二本を撮った今となっては監督としての実力も認められているようだ。
ストーリーは、高校のアイドルとも言える美しいブロンドの5人姉妹の末っ子が手首を切り、彼女を主役にしたはずのパーティで窓から飛び降りて外の柵に突き刺さって死んでしまう事をきっかけにして、その父母と4人姉妹となった家庭の歯車が狂い始める。
学校一の人気者である男が姉妹の一人を好きになって、姉妹とその男の友人たちはパーティに行くことになり、歯車もちゃんと回り始めたかと思ったが、結局残った4人の姉妹も「自殺」と言う道を選ぶ。と言う感じである。


と書くと陰惨な話に聞こえるけど、物語の殆どは五人姉妹が眩しくてしょうがないといったステレオタイプな青春ドラマのような感じ。
大抵のこういった悲惨な事件を扱った映画では自殺や惨劇の原因であるとか、その背景であるとかを見せたり考えたりする意図が感じらるのだが、この映画はそんなことよりも如何にこの姉妹が美しくて、如何に眩しい青春を送っているかと言うところをひたすら描いていた。しかも、内面的な部分ではなく見た目だけのレベルで描いているところが潔かった。
この映画は基本的には学園もので綺麗な少女たちをひたすら描いていると言う意味で、「ピクニック at ハンギング・ロック」に似ているけど、「ピクニック at ハンギング・ロック」が寄宿生のお嬢様女学校だったのに対して、こちらは普通の共学の高校なので雰囲気がぜんぜん違う。
恐らく、この映画は共学の高校ということで、どこかしら感情移入して見る場合が多いのやろうけど、恋にパーティーにとメインカルチャー街道ど真ん中をまっしぐらなこの映画の高校生とは、およそ真逆のアンダーグラウンドな高校生活を送っていた私にとっては余りにも遠い世界であり、感情移入する隙が無かった…
余りにもキラキラしている高校生活エンジョイな彼らの価値観が眩しすぎて、私のルサンチマン精神性からすれば彼らのような道を「このはしわたるべからず」と言われているようだった。
それでも、「The Virgin Suicides」と言うだけあって、無垢であるがゆえの自殺を選んでしまうのwなんとなく理解できるような、この年代の少女の不安定さや脆さが判ったような気になった。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。

PAGE TOP