ミヒャエル・ハネケ 「カフカの「城」」 (1997/オーストリア=独)
この映画はフランツ・カフカの未完の長編である『城』をミヒャエル・ハネケが忠実に映像化したものであるらしい。
フランツ・カフカは私にとって大好きな小説家の一人であるけど、『城』を読んだのは十年以上前の話なので内容の細部を覚えているどころか殆ど何もかも忘れているのでこの映画が原作に忠実であったのかどうかは良く分からない。
私が覚えているカフカの『城』は村の何処からでも見えるけど絶対にたどり着けない城のイメージと、ただただ息苦しいような閉塞感だけである。
この映画が原作に忠実であったのかどうかは良く分からないけど、不思議な堂々巡りの感覚と当初の目的がすっかり忘れられているところは確かにカフカ的と言えばカフカ的という気もするし、主人公である測量技師Kの恋人と助手の双子の意味不明っぷりは確かにそんな感じやった。という気はする。
一方この映画を文学作品の映像化という見方ではなく、単体の映画として見た場合も中々にぶっ飛んだ作りでもある。「善き人のためのソナタ」のケビン・スペイシー似のウルリッヒ・ミューエ演じる主人公が映画に現れて最初にする事が寝る事であるし、カフカの原作同様に映画もストーリー的に未完のまま中途半端ら所でぶちっと終わる。
主人公が寝る所から始まり、未完のまま突然終了する映画なんか無いのじゃないだろうか?
この映画は劇場公開用ではなくテレビ映画として作られたらしいので、純粋な映画作品と言うよりは「映画で観る文学」的なコンセプトがあったのかもしれない。
で、この映画を観て、カフカの『城』についてネットでちょっと調べてみたのやけど、とても面白いページを発見したので紹介。
overQさんのAZ::Blogの「カフカのK(カー)」カテゴリ中でも
「カフカの「城」、完結部分見つかる」と旧版と新版のカフカ全集について書かれた「ふたつのカフカ」を面白く読ませていただきました。
で、その記事によると私が若い頃に読んだマックス・ブロートが編集した版でなく、マックス・ブロートの死後に解禁された、カフカ自身の自筆ノートからのテキストによる全集があるらしい。
その新版から直接に訳出されたカフカ小説全集が白水社から出ているという事でとても読みたくなった。
最近「光文社 古典新訳文庫」とかで新しい訳で古い作品を再評価する試みがとてもブレイクしているけど、ブロート版の旧訳が新しく自筆ノート版からの新訳になって、暗くて重くて深刻で不条理なカフカ像がどうなっているかとても面白そう。
これはちょっと読みたいなぁ。