マジッド・マジディ「運動靴と赤い金魚」(1997/イラン)

amazon ASIN-B000A16QG6この間から「サイクリスト」「カンダハール」とモフセン・マフマルバフ監督のイラン映画を観たけど、次はマジッド・マジディの「運動靴と赤い金魚」である。
アリ少年はお使いの途中に修理したばかりの妹の靴を無くしてしまう。貧乏である上に厳格な父母に言い出せず、兄の靴を妹と二人で共有することになる。
午前の登校では妹が、午後からは兄が靴を履いて学校までの道のりを全力疾走で登校する毎日が続き、やがて小学生対抗のマラソン大会の三位の景品が運動靴である事を知ったアリ少年は「三位」になるべくマラソン大会に出場する。というストーリーである。
日本はもちろん世界的にも有名な映画らしい。動物と子供をメインにするのは卑怯やと思うけど、ここまでやれば文句はあるまいというくらいにその卑怯さを存分に出し切った良い映画であった。


ほのぼのした映画ながら隅々まで伏線を張り巡らせて、中だるみしない様に時々ちょっとしたイベントを挿入し、ちょっとした映像で観客に情報を知らせる演出がとてもテクニカルな印象を受けた。そう来るだろうなと期待せておいてわざと外すラストシーンなどはとても詩的に美しい良い感じであった。
海外向けの英題が「CHILDREN OF HEAVEN」にも拘らず、邦題が「運動靴と赤い金魚」となっているのはこのあたりの良さを汲み取った所以であろう。
周りの危険など気にせず疾走する少年少女はとても絵になる。一方でやたらと急ぐ大人は見苦しい。
子供はモノに執着しながらも醜く見えないのがとても不思議やったけど、疾走し執着する自分自身を他人の目で見ずに没頭するからこそ美しく見えるのではないかと思った。
客観的に自分を見る。という大人にとって日常的な行為は、社会に自分を適合させる試みであると同時にある種の醜さを伴った行為なのだと思った。

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