ベルナール・ウェルベル『蟻』 『蟻の時代』 『蟻の革命』

ベルナール・ウェルベル『蟻』 『蟻の時代』 『蟻の革命』

ベルナール・ウェルベルの『蟻』『蟻の時代』『蟻の革命』を一気読み。 それぞれ3冊が連続した物語になっており、「蟻」と「人間」の世界、その二つの世界を説明し補完するような架空の書物「相対的かつ絶対知のエンシアクロペディア」からの引用、と三つの物語から構成されている。 フランスで科学雑誌の記事を書いていた著者が、蟻が好きで好きでたまらないという情熱を全て傾けた末に生み出されたこの物語のメインはやはり蟻[…]
栗本薫  『レダ』

栗本薫 『レダ』

二日かけて栗本薫 『レダ』を読み終えた。 初版は1983年、今から20年以上前の本であり、文庫本にして三冊分、二段組のハードカバー600ページほどと中々長大な物語だった。 この作者は私が読み続けている『グインサーガ』の作者でもあり、この作者とこの作者の書くものはSFかライトノベルとカテゴライズされるようだ。 人が人を生むことは無く、全ての人間は工場の人工授精により人口胎盤から生まれる、人の帰属先は[…]
ジェフリー ディーヴァー 『青い虚空』

ジェフリー ディーヴァー 『青い虚空』

中々に有名で定評の高い「ハッカー小説」もしくは「オンライン犯罪もの」であるジェフリー ディーヴァー『青い虚空』を読了。 文庫で650ページほどと中々長い本やったけど二晩で読み通した。 ドットコムバブル真っ盛りのシリコンバレーで、護身術のwebサイトを持つ著名な女性が惨殺されたことを発端にした連続殺人事件が幕を開ける。被害者に関する情報を、既に消滅したかに見えるボットを仕込んだ被害者自身のPCにから[…]
イタロ・カルヴィーノ 『不在の騎士』

イタロ・カルヴィーノ 『不在の騎士』

私にとって1959年に発表されたこの『不在の騎士』が初イタロ・カルヴィーノとなる。 1923年に生まれて1985年に没した彼は、20世紀イタリアの国民的作家と見なされているらしい。 アマゾンで中世騎士道の時代、シャルルマーニュ麾下のフランス軍勇将のなかに、かなり風変わりな騎士がいた。その真っ白い甲冑のなかは、空洞、誰も入っていない空っぽ…。『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』とともに、空想的な“歴[…]
J.M. クッツェー 『ペテルブルグの文豪』

J.M. クッツェー 『ペテルブルグの文豪』

J.M. クッツェーが1994年に書いた『ペテルブルグの文豪』を読了した。 「ペテルブルグの文豪」とはドストエフスキーのことを指しており、読む前は彼の伝記的な小説やと思ったのやけど全くそうではなく、どちらかというとクッツェー自身の投影にペテルブルグのドストエフスキーと言う設定を与えているだけのようだ。 義理の息子が自殺したと言う報を受けたドストエフスキーがペテルブルグに赴いて、彼の住んでいた下宿で[…]
G・ガルシア=マルケス 『エレンディラ』

G・ガルシア=マルケス 『エレンディラ』

例のごとく風呂で半身浴をしながら読破した。 農家の鶏小屋で見世物として飼われる、天使と呼ばれる翼の生えた老人、世界中から人を呼び寄せるほどの薔薇の匂いが漂ってくる、腐った蟹と海草に埋め尽くされた海、誰しもが好きにならずにはいられず、見る人全てを魅了せずにはおれない程の感じが良い水死体、自分の死ぬ日をはっきり知っている、紙を蝶のように舞わせる上院議員、自分を町の皆に認めさせるために、幽霊船を誘導して[…]
G・ガルシア=マルケス 『愛その他の悪霊について』

G・ガルシア=マルケス 『愛その他の悪霊について』

ガブリエル・ガルシア=マルケス『愛その他の悪霊について』を読んだ。愛は成就されず、成就されるのは愛でないものばかり。十二月の最初の日曜日、十二歳になる侯爵のひとり娘シエルバ・マリアは、市場で、額に白い斑点のある灰色の犬に咬まれた。背丈よりも長い髪の野性の少女は、やがて狂乱する。狂犬病なのか、悪魔にとり憑かれたのか。抑圧された世界に蠢く人々の鬱屈した葛藤を、独特の豊饒なエピソードで描いた、十八世紀半[…]
J.M. クッツェー 『夷狄を待ちながら』

J.M. クッツェー 『夷狄を待ちながら』

もうすっかりお気に入りのJ.M. クッツェーが1980年に書いた『夷狄を待ちながら』を、半分は日曜日にうつらうつらしながら夢うつつ状態で、残り半分を風呂で半身浴しながら読んだ。 原題は「Waiting for the Barbarians」という事で、アマゾンの紹介を引用すると、静かな辺境の町に、二十数年ものあいだ民政官を勤めてきた初老の男「私」がいる。暇なときには町はずれの遺跡を発掘している。そ[…]
レベッカ・ブラウン 『若かった日々』

レベッカ・ブラウン 『若かった日々』

レベッカ・ブラウン『若かった日々』を読んだ。 父と母を失い、自分がレズビアンであると認識した現在から見た場合の「若かった日々」、つまりは母と父に関する事、自分がレズビアンなのに気付く事に関する自伝的な連作短編集。 三島由紀夫と志賀直哉に代表されるように、まぁ、よくあるテーマではある。 原題である「The end of Youth」の地点に収束する「若かった日々」を語る事で母の人生と死を受け入れ、自[…]
ブリジット・オベール 『マーチ博士の四人の息子』

ブリジット・オベール 『マーチ博士の四人の息子』

たまには趣向を変えてミステリなど。 ブリジット オベール『マーチ博士の四人の息子』を仕事から帰って一気に全部読んだ。 アマゾンでは医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の[…]
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