ミラン・クンデラ  『笑いと忘却の書』

ミラン・クンデラ 『笑いと忘却の書』

最近お気に入り小説家の上位に急上昇しているミラン・クンデラ の『笑いと忘却の書』を読了。 ミラン・クンデラが亡命先のフランスから出版した最初の小説であり、この出版が直接の原因となってチェコの市民権を剥奪されたらしい。 amazonの紹介によると党の修正により、となりの男に貸した帽子を除いて、すべての写真から消滅した男。一枚の写真も持たずに亡命したため、薄れ行く記憶とともに、自分の過去が消えてしまう[…]
イーサン ケイニン 『宮殿泥棒』

イーサン ケイニン 『宮殿泥棒』

イーサン ケイニン 『宮殿泥棒』を読んだ。 ネット上で本好きと言う本好きがそろって絶賛する柴田元幸訳の中編集。 普通の物語では決して主人公になれないような気弱で生真面目な「優等生タイプ」を描く四篇が収められている。 真面目一筋でそこそこの成功を収めた男が大成功を収めた幼馴染と会って心が揺れ動く様を描いた「会計士」、数学の天才で大人たちを煙に巻く兄を持つ、そこそこ優秀な弟の話である「バートルシャーグ[…]
池田清彦 『初歩から学ぶ生物学』

池田清彦 『初歩から学ぶ生物学』

enzian氏ブログで紹介されているお勧め本と言うことで、読もう読もうと思っているうちに延び延びになっていたものの、やっとこさ読んだ。 と言うことでenzian氏のブログの該当エントリはこちら。 内容は一般向けの生物に関する本や新聞記事を興味を持って深く読みこなす素養がつく位の、生命論、生態学、発生学、進化論、分子生物学などなどの話題。 いきもの好きなのでかなり楽しく読めたが、そうでない人も楽しく[…]
吉田満 『戦艦大和ノ最期』

吉田満 『戦艦大和ノ最期』

戦後文学、戦記文学の古典として名高い、吉田満『戦艦大和ノ最期』を読む。 軍少尉、副電測士として「大和」に乗り組んでいた著者が、必敗の作戦へ最後の出撃をしたものの、敵の航空部隊と魚雷攻撃によって成すすべなく沈没させられる「大和」から逃げ出し、そして救出されるまでを漢字カナ交じりの文語体でストイックに多弁を控えて淡々とのべられて行く。 緊迫した戦況の記述と悲惨な救出劇の他に、戦友たちの個人的なキャラク[…]
パウロ・コエーリョ 『悪魔とプリン嬢』

パウロ・コエーリョ 『悪魔とプリン嬢』

ブラジルのこえぴょんことパウロ・コエーリョの『悪魔とプリン嬢』を読了。 人は七日間で生まれ変われることができるというテーマに貫かれた、『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』と『ベロニカは死ぬことにした』に続く「そして七日目には…の三部作」の完結となるらしい。 中々有名なの本でかつ誉める人が多いにも拘らず、ふざけたタイトルとそのタイトルで特定の人物を連想させられることから今までなんとなく避けてきたものの[…]
レベッカ・ブラウン『体の贈り物』

レベッカ・ブラウン『体の贈り物』

とあるwebページで絶賛されていたレベッカ・ブラウン『体の贈り物』を読了。 柴田元幸が翻訳したと言うことも読んだ一因である。 短編の構成を取りながらもそれらがリンクして連作としての物語になると言う構成の、死を待ちながらもどんどん日常生活が出来なくなって行くHIV患者達と、彼らのホームケア・ワーカーとして身の回りの事を世話する女性の物語。 限りなくチープでありきたりの押し付けがましく説教臭いお涙頂戴[…]
村上春樹 『東京奇譚集』

村上春樹 『東京奇譚集』

東京にまつわる奇譚を集めた短編集の『東京奇譚集』を読む。というか読んでなかったのを思い出した。 2005年の9月初版ともう一年前の本屋で、確か『アフターダーク』を読んで「駄目だこりゃ」と思ったので、次に出たこの『東京奇譚集』はパスしていたはず。 買うのは何やけど、図書館で借りて読む分にはええやと言うことで借りて読んだ。 「新潮」に連載された四作品と書き下ろしの一作品の構成。 ころっと作風を変えた『[…]
アゴタ・クリストフ『どちらでもいい』

アゴタ・クリストフ『どちらでもいい』

今年の9月に出たばかりのアゴタ・クリストフの短編集『どちらでもいい』を読む。 アマゾンでは夫が死に至るまでの信じられないような顛末を語る妻の姿が滑稽な「斧」、著者自身の無関心を表わすかのような表題作など、全25篇を収録。祖国を離れ「敵語」で物語を紡ぐ著者の喪失と絶望が色濃く刻まれた異色の短篇集。 と紹介されているが、訳者のあとがきによると、これらの物語は1970年代から1990年代前半のアゴタ・ク[…]
阿部和重『シンセミア』上・下

阿部和重『シンセミア』上・下

阿部和重『シンセミア』を読了。 毎日出版文化賞、伊藤整文学賞をダブルで受賞したこの作品は、総ページ816、原稿用紙にして1600枚の長大な物語であり、一気に読ませるストーリーテリングの力を持っていた。 「神町」に住む複数の人間の視点から語る物語が重層的な構造をなして「神町サーガ」を形作る構成を取る訳であるが、過去に読んだ阿部和重の作品と同じく、この作品の中に人間的な魅力を感じられるような登場人物は[…]
アゴタ・クリストフ『文盲』

アゴタ・クリストフ『文盲』

アゴタ・クリストフ『文盲』を読んだ。 110ページとあるものの1ページあたりの文字数は少なく読破に30分くらいしかかから無い。 自伝と言うことになっているけど、「読む事」「書く事」に関するテーマについて年代順の記憶に沿って書かれており、そんな短い文章の組み合わせの構成は「自伝的随筆」と言ったところか。 母語であるハンガリー語ではない「敵語」で書かざるをえなかった苦しみと不自由さからこの『文盲』とい[…]
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