映画:アレハンドロ・ホドロフスキー「サンタ・サングレ 聖なる血」 / グロ系愛の物語

amazon ASIN-B00009CHBYアレハンドロ・ホドロフスキーの「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」に続く第三作目の「サンタ・サングレ 聖なる血」 (1989/伊=メキシコ)を観た。
ナイフ投げの名人のサーカス団の座長である浮気性の父と、両手を切断された後にレイプされて殺されて聖なる血を流した乙女を狂信的に信仰する母をもつ息子の少年は、浮気しようとする父と嫉妬で狂った母の惨劇を目撃して精神を病んでしまう。
ある日収容されている病院から母の姿を見つけた彼は、病院から抜け出して母の下に向かい、母の両腕として生きてゆく事を決意するが…
という感じの話である。
ネット上では、彼の作品としては一番わかりやすいと言われる事が多いように、「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」と比べた場合に映画の中にちゃんと一本のストーリーが通っていた。
彼の作品やからどうせわけわからんやろう。とたかをくくって観始めたのでかなりびっくりしたけど、映画としてはとても面白かった。
まさかこんな愛の物語やとはまったく思っていなかった。


ホドロフスキー的な映像の連続やけど、ストーリーがしっかりしてるので印象は前作二つとはまったく違う。
前の二作同様に大量の血やとか残虐シーンやとかフリークスな登場人物といった彼らしい映画的語彙はそのままやったけど、この映画ではそれがストーリを前に進めてゆく原動力として使われていたように思うし、前作と前々作と比べて、達観やら諦観したようところが少なかったせいか、薬物と禅を結びつけるような昔のヒッピー的な胡散臭さというよりは、とてもラテンアメリカ的なマジックリアリズム風味の雰囲気がずっと漂っていた。
しかし、なによりもヒロインの女の子がとても良かった。まったく美人ではないヒロインの発する魅力が全くあざとくなく、とても自然に描かれている映画ってのはそんなに多くないと思う。
普通の映画としても観る事ができるし、ホドロフスキー的映像美も味わえるなかなかすばらしい映画であった。

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