映画:「ダークナイト」 / 全年齢全方向全要素的娯楽大作 / 神なき(つまりは悪魔なき)時代の悪

amazon ASIN-B001AQYQ1M面白いと評判の「ダークナイト」を観たが、確かに面白かった。
「バットマン」(1989/米)と「バットマン・リターンズ」(1992/米)を予習として見たけど、ストーリー的には全く関係なかった。
どうせなら「バットマン・ビギンズ」を観れば良かった。
この映画での一応の主役はバットマンであるけど、実際の主役はバットマンの敵役であるジョーカーである。
ジャック・ニコルソンのジョーカーはひたすら「狂気」であったけど、今回のヒース・レジャーのジョーカーは「狂気」とか「異形」とかいう次元を超越していてとても素晴らしかった。
ということで、このジョーカーをメインに感想を書いてみる。


彼は金銭を要求するでもなく、組織のトップに立ったり町を支配したりと権力を求めるわけでない。彼の求めるものはただゴッサムシティを混乱に陥れて既成の作られたモラルとか秩序を壊すことのみ。
しかもそれを一方的に上から災難が降ってくるようにするのではなく、市民自ら自らの意思と欲望で選択させるように仕向けるところがエグい。
彼の信念の中には、人間とは欲望にまみれた醜いものでしかなく簡単に悪の道に堕ちる。というのがあるようで、彼の破壊活動は町を彼の好む金のかからない「ダイナマイト、火薬、ガソリン」で外面的に壊すだけでなく、町の人の心の醜い欲望を煽り立てて内部から蝕んでゆくところがメインである。
金とか権力といった分りやすい欲望にのみ収束する人間が魅力的であることはほとんどないけど、彼はそんなものに興味を抱かないどころか、自らの力と主義が真実であることを確信し、自分の主義のために自分の死を全く恐れていないところが十分に魅力的である。
よれよれしたスーツから剥げかけたメイクまで細部にいたるまで隙のないすばらしい悪役であった。
自分の口の傷がなぜできたかについての話が毎回違うとことによって、彼が子供の頃のトラウマとか強烈な人間不信が原因で悪の道に落ちたとかとかいった分りやすい設定を真正面から拒否しているけど、彼をキリスト教圏にありがちな「純粋悪」とするのではなく、虚言癖を持つ根本的に我々と違う危ない人レベルにまで貶めているところが今時の映画であるような気がした。
つまり、ジョーカーは悪魔でも悪の化身でもなく、特別な存在ですらない、我々の間から時々生まれる絶対的に理解できない先天的な快楽犯罪者的な変態の一種としてみなしており、こういった「悪」にしか見えないものを解釈したり理解しようとするのではなく、ただ描くだけの方向性に好感を持った。
マイケル・キートンのバットマンは余りも人相が悪くて正義の味方に見えないところが良かったけど、私にとっては「リベリオン」なイメージのあるクリスチャン・ベールが、表の顔としてあまりにも典型的な金持ちっぷりと二枚目な爽やかっぷりを発揮していながらも、裏の顔であるバットマンで苦悩するところが、ジョーカーとのコントラストとしてとても良かった。
信念に沿って迷うことなく確信を持って突き進むジョーカーに対して、バットマンたちが迷い苦悩しながらボロボロになりながら戦うところが良かった。
「試合には負けたが勝負には勝った」と「試合に勝って勝負に負ける」ということで、どちらにとってもバッドエンド的であった。
しかし、今時に過剰な資金であらゆる年齢のあらゆる客層に対したあらゆる要素を詰め込もうとする、全方向全要素的なハリウッドな方向性を目指すとこのように映画になるのだろうか。
そしてそういった方向性で到達しうる最も高い点にある映画がこの「ダークナイト」ではないだろうか。
作品的にも商業的にも良きお手本と言うことで、多分しばらくはこんな感じの映画が量産されるのだろうなぁ…

2件のコメント

  • 面白かったですね、この映画。
    2008年度、個人的に実写映画部門ではNo1.をあげたい。
    「正義の味方」が結果、信念の為に法的に追われる身になる、という何とも言えないラストに今までのアメコミキャラとは一線を画しているよに思われます。
    まぁ主役はジョーカーですけど。
    ジョーカー役のヒース・レジャーがこの作品が遺作で亡くなってしまったのが非常に哀しいです。
    この映画の前作「バットマン・ビギンズ」も観るべし、かと。

  • 「観るべし」って事なので「バットマン・ビギンズ」も観てみます。
    いやしかしこの映画は映画館で観たかったです。

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