映画:「ロック・ユー!」 / カンタベリーなある騎士のまさにロックな物語

amazon ASIN-B00005USPO ダークナイトのジョーカー役のヒースレジャーが主演である「ロック・ユー!」(2001/米)を観た。
貴族のみが出場できる、庶民の娯楽と騎士の栄誉の場であった馬上槍試合に、優勝を目前に急死した主人とすりかわって従者の一人が身分を隠して出場する。
出場を機に平民だった従者は騎士として成り上がるために、仲間たちと共に貴族に成りすまして馬上槍試合に出場してゆく。
物語中で「フランス人が教皇だ」なる台詞が出てくるので、アヴィニョン捕囚の時期の14世紀くらいを想定しているようであるけど、その中世の物語の音楽としてロックミュージックが使われているのが斬新なのだろう。
たしかに、ランスを構えた騎士が馬上ですれ違いざまに、その武器が砕けるほどに突き合うシーンのバックにロックがかかるのはなかなか良い感じである。
誰にも安心して観ていられる良い映画であった。


「ロック・ユー!」なる邦題は微妙な気がするけど、原題は「A Knight’s Tale」で、この映画中にも主人公の従者として登場するジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』の『The Knight’s Tale』にかけているのだろうが、邦題にすると「ある騎士の物語」くらいの意味になって全くインパクトがなくなるうえに、『カンタベリー物語』との関連性もちょっとでも文学に詳しい人じゃな限り分りにくすぎる。
ということで、Queenの「We Will Rock You」が冒頭にかかる(らしい)こともあるし、イギリスで労働者階級が自分の階級から成り上がるにはサッカー選手になるかロックミュージシャンになるしかないという話もあるくらいで、カウンターカルチャーとしての「ロック」の意義も踏まえて、「ロック・ユー!」と言うタイトルは意外になかなか良い題かもしれない。
映画の中でも貴族と一般庶民の間に強烈な身分関係があったり、身分が越えられない壁であるとするようなモチーフはとても多かった。
庶民たちが自分たちの味方であり、自分たちに近いと感じる、貴族の騎士たちを次々となぎ倒し、自身の誇りある行動によって騎士という称号は貴族と言う身分の問題でなく、気高い心のありようであるという一種の価値転換を身をもって示した彼は、労働者階級から爵位を授かって貴族となった(一代限りであるけど)ポール・マッカートニーやエルトン・ジョンのように、労働者階級の英雄であると言う意味でロックスターであった。
階級闘争であるとか、労働者階級の悲哀であるとか、そういった話はともかく、この映画は週刊ジャンプ的「友情・努力・勝利」の少年漫画三原則を地でいくようなベタベタで面白くて爽快感あふれる良い映画だった。

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