「墨攻」 (2006/中=日=香=韓)
最近ちょっとしたヘタレブーム?ということで、ヘタレ城主が出て来るらしい「墨攻」を観た。
大国「趙」に攻められつつあり、国家存続の瀬戸際にあった小国の「梁」は、思想集団であり防衛戦のスペシャリストでもある墨家に援軍を求めるが、やってきたのは自称墨家の革離という男ただ一人。
革離は「趙」の10万にも及ぶ軍に対して、余りにも少ない四千の民を率いて篭城戦を戦い抜く決意をする。という感じで話は始まる。
むぅ、確かに城主のヘタレっぷりは見事であった。一人で援軍に来た革離が人民から好意と信頼を自分以上に寄せられると疑心暗鬼になって、彼を王位簒奪の疑いありとして城から追い払って矢を射掛け、彼に好意を寄せていた国民を処刑場に送る。
口だけは強気で、大事な決断は酔っ払った状態でないと出来ないし、そのうえ自分の力では国を守る事が出来なかった。
結局「梁」に対しては墨家の軍師一人だけしか援軍が来なかったけど、逆に言えば周りの国に見捨てられているとも言える。確かにこんなヘタレ城主のいる国にはどの国も援軍なんか出さんやろう。墨家の軍師一人でも十分過ぎるくらいに十分である。
しかし、城主がヘタレであればあるほど、主人公の革離が引き立つと言うもの。
彼の籠城戦での防衛戦略は、知略と言うよりは奇策と言う感じがしたけど、それでも見事に敵を撃退する様は爽快であった。
やっぱり攻城戦は男のロマンである。破城槌、雲梯が出てくるだけでワクワクである。
こういったハデハデな強攻的な攻城戦も良いけど、兵糧攻めの上に、死体や病人が投石機で城内に投げ込まれ、栄養失調と伝染病とでじわじわと追い詰められてゆくような感じの、限りなく暗くてジメジメした包囲戦の攻城戦を描いた映画も一度観てみたいと思った。
墨家は一応思想集団であったはずやけど、革離は思想家と言うよりは理念と現実の狭間で悩む好青年といった趣であったのがちょっとだけ残念であった。
この映画に明らかに含まれるであろう、戦争は全て不毛であるとか、関わったもの全てが不幸になる。とかいったメッセージ性を一切無視した感想でした。