映画:「ハサミを持って突っ走る」 / 食傷気味な感じの物語 / ちょっと残念

原作がアメリカで中々のベストセラーになったらしい「ハサミを持って突っ走る」を観た。
amazon ASIN-B000VV1D18自分は偉大な詩人だと確信する誇大妄想の母親にアルコール依存症の父が離婚して、やがて母からネグレクトされる子供が主人公である。
一人暮らしをする母は捨てた息子を信頼する精神科医に預け、主人公はそこで家族のように暮らすのだが、精神科医の家族も例外なく病んでいる。
ドッグフードを食べながら恐怖映画ばかり観る母親、小児性愛者克服の治療を受けているゲイの長男、ネコを飢え死にさせて葬式をする病的に潔癖な長女、その長女と衝突してばかりいる典型的なビッチ系のトラウマ少女な次女、そして家長にして一番狂っている精神科医の父である。
訳がわからない人たちに囲まれながらも、それなりに成長して行く少年の姿を描く教養小説的な作りの映画であった。


ちょっとおかしい人たちがドタバタするようなコメディを想像していたんやけど、笑いの要素は全く無く、延々と陰鬱で陰惨な話が続く物語である。
一応コメディーという事になっているらしいけど全然笑えない。
手法や映像はコメディーでポップやけどひたすらシリアスで重い雰囲気の映画であった。
原作はレビューや評判を読む限り、おかしな人達とのの交流や彼らなりの成長が描かれている面白おかしい物語であるような雰囲気なのだが、この映画の演出はただ登場人物の悲惨な境遇とその悲惨さを強調し、登場人物がひたすら叫ぶ物語である。
最近はこの手の演出の、精神の病だのトラウマだの幼児期の悲惨な体験だのを前面に押し出したような映画や物語に食傷気味であるし、この手の物語につきものの滅茶苦茶な言動の後に悲惨な幼児期の体験やトラウマや精神疾患を免罪符かの如くにして泣き落としにかかる人間にもうんざりぎみである。
そういった闇を抱える人にとって、ただそういったところを見せ付けられるの何の意味があるのだろう?
私としては、普通の人とは違っていても、普通の人と違う悩みを抱えていても、普通の人に理解されなくても、「別におかしくてもええやん」という方向性で自分なりの生き方を見つけて、一個の人間として自立して生きて行くような様が、世のマイノリティーやトラウマ少年少女や同じような闇を抱える人間を元気付けるような映画を期待していたのでちょっと残念であった。

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