本多猪四郎「マタンゴ」(1963/日)
2007年12月9日
有名映画というよりはどちらかと言うとカルト映画の部類に入るらしい「マタンゴ」を観た。
ストーリーは、ヨットで漂流した青年たちが食糧がほとんど見つからない無人島に流れ着き、危ないと理解しながらも危険なキノコ「マタンゴ」を食べておかしくなってゆくというもの。
しかしながらそれにいたるまでのエゴむき出しでの人間同士の我のぶつかり合いが中々いい感じであるし、キノコとキノコ人間の造形、漂流した登場人物全ての人間のキャラがすべて立ちまくっているところも素晴らしい。
ゴジラシリーズと同じである本多猪四郎が監督で円谷英二が特撮担当、しかも当時は全く逆のヨットの話である「ハワイの若大将」と同時上映でプログラムが組まれていたらしく、色々な意味で中々に気合が入っている。
ボルトアクションのライフルをボルトで装填後にセミオートで撃ちまくるのが銃器マニアとしては「えーっ」であるものの、おどろおどろしい雰囲気とエゴむき出しの人間の醜さがうまく描かれていたように思う。
マタンゴ自体が恐ろしいと言うわけで無く、自ら理性を放棄して欲望の赴くままキノコを口にして、怪物となってゆくところが「いやーん」のツボである。
この映画を子供の頃に観たある年齢以上の人にとって、しばらくキノコが食べられなくなったり人間不信に陥ったりと言うトラウマ映画であるらしいのも頷ける。
死霊よりも妖怪よりも毒キノコよりも、何より人間が一番恐ろしいというホラーの王道を行きつつも、青年の一人が言う「バカッ!あいつら半分キノコだ!!」という台詞の通り、この手の映画につきものの笑いのポイントも抑えてあって中々素晴らしい映画であった。