スタンリー・キューブリック 「アイズ ワイド シャット」(1999/米)

amazon ASIN-B00007HS8Jスタンリー・キューブリックの遺作となった「アイズ・ワイド・シャット」を観た。
倦怠期にさしかかろうかという夫婦を巡る性的、浮気「的」騒動にまつわる話を描く映画で、トム・クルーズとニコール・キッドマンのリアル夫婦が主演であるところが話題になったらしい。
普通ならあえて観ようかと思うタイプの映画じゃないけど、監督がスタンリー・キューブリックということで。
結局この映画は、特定の個人の、特定の問題に対する解答を提示したものという事になるのではないだろうか。例えばキューブリック個人の思う「夫婦」や「性」についての問題のある種の回答である。という風に。
しかしながらこれは映画的というよりは文学的なテーマであるようにも思う。
年取るとなんか説教臭くなるというのは本当だなと思ったけど、聞いててうるさいような説教でもない。説教臭いにもかかわらず最後の最後で言い放たれた単語が良かった。


事件が起こりそうで起こらず、巻き込まれそうで巻き込まれず、陰謀のように見えて陰謀でなく、道を踏み外しそうで踏みはずさない。というのが続く、全体的には盛り上がりそうで盛り上がりきらないストーリーでもある。
そういうストーリーにすると映画としては全く面白くなくなりそうなものやけど、完璧主義のキューブリックらしく、逆にそこがリアルに生々しかった。確かに現実なんかそんなもんであると思う。人生そんなにドラマチックじゃない。
他人から観ればあまりにも些細な事を問題にしたり悩んだり、知らない内に危機を回避していたり、結局は最後の一歩を踏み出さずモラリティーに頼ってみたり、そんなモラリティーに頼った自分を誇らしく思ったり。現実の人間はそんなものである。
乱交シーンや夫婦間の話があまりにチープすぎるという指摘がweb上の感想で多かったけど、そのチープさが逆に生々しいのだ。現実は往々にして余りにもチープなものやと言う意味で。
トム・クルーズの格好よくて小金持ちでモテモテやけど至ってノーマルで常識的な凡人。てなキャラクターの彼の演技は変に真に迫っていて良かったと思う。
幾つもの伏線を寸止めで最後まで引っ張っておきながら最後の最後まで何も起こらず、それでいてそれなりのカタルシスを得られる映画も珍しい。
役者が豪華であるがゆえに逆にそこに目が行くけど、ミニシアター系の映画としてみればいい感じなのではないだろうか。
でも良く考えればこんなに時間と金を使ってミニシアター系を作る事は無いわな。と言えなくもないし、大体2時間半は長すぎる。
とは言ってもこんなに大量に感想を書いてるって言う事は、それなりに気に入ってるのかも…

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