アレハンドロ・ホドロフスキー 「エル・トポ」(1969/メキシコ)

amazon ASIN-B00009CHBW偶然レンタル屋さんでであった某氏に薦められて観た。調べてみると「カルト映画の開祖にして金字塔」と呼ばれる程に世評の高い伝説的なカルト映画ということになっているらしい。
公開当初は配給元がつかないほどやったものの、著名人やらアーティストと呼ばれる人たちが絶賛したおかげで有名になり、最終的には興行的にも成功したようだ。
黒装束に身を包んだいかにも怪しげな男がすっぽんぽんの子供を後ろに乗せた馬で現れて、その子供にもう一人前だと言う事で母の写真と人形を砂漠の砂に埋めさせるところから映画は始まる。
主人公の男はマカロニウェスタンな西部劇のように拳銃を撃たせたらむやみに強く、通りすがりの村が賊に全滅させられたと知るや単身で賊に襲撃をかけて復讐を果たす。ちょっとした北斗の拳とケンシロウのようなものだ。銃で撃ち殺すわけなので「邪魔するヤツは指先一つでダウンさ」というのもまぁ正しい。
主人公の名でもあるタイトルの「El topo」はスペイン語でモグラであり、冒頭でそのモグラについて言及されていた。モグラは太陽を探して地面を掘っているが、地面の外に出て本当に太陽を目は光を失う。ふーん


で、旅を続けているうちに砂漠に住む銃の名手四人を殺すために砂漠の中を探し回る羽目になるのやけど、四人とも明らかに自分より強いので、男はあまりにも姑息な手段で4人に勝負を挑む。
村を襲った賊という、いわば雑魚相手にはケンシロウのごとき強さを見せつけたエル・トポも、実力では絶対に勝てない砂漠の四人の名手に対してはジャギのように騙し討ちと奇策のみで戦うところが可笑しい。
そしてその四人がガンマンと言うよりは宗教者であり、またそれぞれに魅力的で個性的で面白い。
この四人と彼らとの対決が中々の見せ場になるのやけど、その対決の後から今までのストーリーとは全く違う、この映画の後半が始まる。
前半、エル・トポは賊の前で「私は神だ」と言っていたけど、後半彼は「私は神ではない、ただの人間だ」と言っており、確かに前半と後半の違いが一言で表わされているような気はする。
一人目に対して発砲した瞬間、動物の鳴き声を発する二人目の親子、大量のウサギの死体の中で行われる三人目との決闘、そして四人目との決闘はどれも息を飲むような映像であった。
またどの場面やどのシーンをとっても無駄の無いような良い映画であったと思う。

1件のコメント

  • 『エル・トポ』 美しい傑作

    【ネタバレ注意】 菊池寛の『恩讐の彼方に』で知られる「青の洞門」を、舞台をメキシコに移して描いた傑作。 前半、主人公の非道ぶりを描く部分は、エロ・グロ満載の幻想美で、その手触りは菊池寛というより国枝史郎の小説世界に近い。 『恩讐の彼方に』の主人公市九郎は、真言宗の僧となるが、モデルである実在の僧・禅海は、曹洞宗である。 しかし、アレハンドロ・ホドロフスキーがインタビューの中で公案禅(こうあんぜん)…

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