ヴェルナー・ヘルツォーク 「神に選ばれし無敵の男」 (2001/独=英)

amazon ASIN-B0001N1QQIヴェルナー・ヘルツォークの「神に選ばれし無敵の男」を観た。
予言と占いでオカルト好きのヒトラーに取り入って演説を指南したエリック・ヤン・ハヌッセンとユダヤ人社会で「現代のサムソン」として語り継がれる英雄であるらしい怪力のジシェ・ブライトバートという実在の二人の男の物語である。
ストーリーとしてはポーランドのユダヤ人街で怪力の鍛冶屋として働いていたジシェがちょっとした事からドイツ人のエージェントの目に止まり、ベルリンのハヌッセンが経営する「神秘の館」なる見世物小屋で働く事になる。というもの。
ナチスによる政権掌握前夜とも言うべき不安な時期のベルリンの、「神秘の館」なる上流社会の人々向けの見世物小屋で、ハヌッセンは千里眼を見世物に、ジシェは怪力を見世物にするわけで、何とも怪しい雰囲気が満開である。


ティム・ロス演じるハヌッセン以外の主要な登場人物は殆ど全て素人の役者であるらしく、主人公ジシェを演じているヨウコ・アホラなる人物は実際に石の玉を持ち上げたりトラックを引っ張ったりするような怪力コンテストで何度も世界タイトルを取っているそのスジでは有名な人で、一応ヒロインのピアニストも本物のピアニストらしい。
見世物としての怪力とピアノは確かにホンマモンがしているわけやから見ていて「おーっ」て感じやったけど、ティム・ロス演じる千里眼の見世物はなんとも言えんオカルトチックで胡散臭い怪しさ満開であった。
「正直で真っ直ぐな怪力男」と「ピアニストになりたいピアノ弾き」を演じる彼らは確かに役のままの人であったけど、考えてみれば「自分を偽って自分を作り上げて、怪しい力を持つ男を演じ続けていた男」を演じるティム・ロスも役のままといえるだろうし、その配役のおかげで見世物が嘘臭くなくて、ちゃんとした見世物になっていたんやなぁと。
邦題の「神に選ばれし無敵の男」はちょっと微妙な感じやけど、原題は「Invincible」ということで「無敵の」だけでなく「揺るぎない」の含意もある。
全般的にハヌッセンが目立ちすぎのような気もするけど、精神的に「Invincable」の男と肉体的に「Invincable」の二人の男の物語であった。
大量の蟹やとかクラゲとかの映像や多くのそれっぽい台詞なども含めて、中々不思議な雰囲気の後味のする映画であった。

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