死を思う人を想う

死を思う人を想う

ジャンケレヴィッチの『イロニーの精神』を読んでとても面白かったので、彼の他の著作も読んでみたくなった。 読んだ『イロニーの精神』が彼のキャリアの初期にあたる作品だということなので、後期の著作で彼の主著とも言われている『死』でも読んでみるべかということで、母校の図書館を探す。 本自体はフランス哲学の分類ではなく、テーマ別分類の「死」についてのコーナーで見つけたのだが、背が破れ表紙や角がボロボロになっ[…]
『イロニーの精神』ウラディミール・ジャンケレヴィッチ/殉教者でもレジスタンスでもなくサバイバルするイロニストなる超人

『イロニーの精神』ウラディミール・ジャンケレヴィッチ/殉教者でもレジスタンスでもなくサバイバルするイロニストなる超人

ISBN-10: 4480083782  ほんとに久しぶりに哲学とか思想とかそういった類の本を読んだ。ウラディミール・ジャンケレヴィッチの『イロニーの精神』である。 ウラディミール・ジャンケレヴィッチなる人物は1985年に死去した、「分類できない哲学者」とみなされているような、独特の思考を展開したちょっとマイナーな哲学者である。 音楽にも造詣の深い、音楽論も多数遺している、自らも演奏家だった思想家[…]
全否定系旅行記

全否定系旅行記

ISBN-10:404366205X 昨日一日で読んでしまった『インド怪人紀行』が面白かった。 この本のテーマは「インドにハマる者は、インドの何にハマるのか?」ってことで、基本的にはプー系のむさ苦しい男四人のインドへの貧乏旅行記なのであるが、 しかし、旅行記やのに自分の人生の節目の回想シーンや同行者との思い出が延々と語られたり、旅行中の人間関係とその背後にウェイトがおかれて書かれていたり、 最後に[…]
ボーヴォワールはこう言った。/「自由であること」

ボーヴォワールはこう言った。/「自由であること」

ボーヴォワールと言えば『第二の性』でお馴染みの実存主義の思想家や文学者であり、ジェンダー論とかフェミニズムの分野でも語られることが多い。 フェミニズム的な視点から女性を隷属させるシステムであるという結婚制度や家族制度を否定しながらも、生涯共にあったサルトルとの関係は、色々な文学の題材や映画にまでなるほど有名である。 男性の言う「自由」が自らの欲望の拡張を求めているようにしか見えないことが多いの引き[…]
永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか 生きものたちの東日本大震災』 @災害

永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか 生きものたちの東日本大震災』

ISBN-10: 4062577674 ツイッターとブログでつながりのある、けい。さんがブログで紹介されているのを見て、永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか 生きものたちの東日本大震災』ブルーバックスを読んだ。 この本の著者はもともと自然の豊かさに惚れ込んで東北に移り住んだ、昆虫や植物の図鑑などの写真を撮るカメラマンであり、この本はその彼が愛したその豊かな自然が今回の震災によってどのような影響[…]
川島小鳥『未来ちゃん』/「過去ばあさん」でも「現在さん」でもない「未来ちゃんの写真」あるいは「写真の中の未来ちゃん」

川島小鳥『未来ちゃん』/「過去ばあさん」でも「現在さん」でもない「未来ちゃんの写真」あるいは「写真の中の未来ちゃん」

イジスの写真展の話を書いたのでそのついで、ということも無いけど、最近みつけたとても気に入っている写真集を紹介。 ISBN-10: 490429209X これ、川島小鳥の『未来ちゃん』。 一見すると梅佳代系のほのぼの写真集に見えるが実は全く違う。 私にとってこの『未来ちゃん』は心の一番奥底にあるなにものかと共振して大きく揺り動かすほどのエネルギーを持った写真集だった。 まぁ実際どんなだかは見て頂くし[…]
古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』/フリーライダーとイージー・ライダー

古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』/フリーライダーとイージー・ライダー

ISBN-10: 4062170655 気鋭の1985年生まれの社会学者、古市憲寿による『絶望の国の幸福な若者たち』を読んだ。 経済や産業や環境や政治やその他様々な観点から、どう考えても日本の未来は暗いし絶望的ですらある。と言われている。 今のおっちゃんおばちゃん、じいちゃんばあちゃんは、 我々はすべてが成長してゆく世の中に生きて希望を持てたけど、これからの世代は希望がなんか持てないではないか。 […]
勝山実『安心ひきこもりライフ』/人間である事に対する「然り」/ひきこもり新世紀

勝山実『安心ひきこもりライフ』/人間である事に対する「然り」/ひきこもり新世紀

ISBN-10: 4778312589 御大の十年ぶりの著書、勝山実『安心ひきこもりライフ』を読んだ。 この本は全国不登校新聞社発行『Fonte』紙上での氏の連載と、現在も絶賛更新中のブログ「鳴かず飛ばず働かず」からの書籍化ということになろうか。 内容は「ひきこもり」を全肯定した前提の上で、いかに「ひきこもり」としてサバイバルするかをひきこもり初心者にレクチャーする体裁をとっている。 全国160万[…]
レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』/ゆけ~ゆけ~レヴィ=ストロース、ドンとゆけ~♪

レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』/ゆけ~ゆけ~レヴィ=ストロース、ドンとゆけ~♪

ISBN-10: 4121600045 そういえばちょっと前にレヴィ=ストロース『悲しき熱帯』を読んで、感想を書くつもりでいたのだがすっかり忘れていた。 二年ほど前にレヴィ=ストロースが死去した時に「そういえば読んでなかったわ」というので読むつもりでいたのだが、なぜか読むタイミングをはずしていたのをやっと読んだのだ。 私が読んだのは上下巻に分かれたソフトカバーのものではなく、世界の名著の一冊『世界[…]
柳澤桂子2冊/Yo観自在菩薩、無色声香味触法ポーーゥ、ぎゃーてーぎゃーてー

柳澤桂子2冊/Yo観自在菩薩、無色声香味触法ポーーゥ、ぎゃーてーぎゃーてー

ISBN-10: 4093875219 ISBN-10: 409387588X 神谷美恵子のことについてネットで調べたり、彼女について書かれた文章を読んだりしていると、なぜか「柳澤桂子」の名前が良く出てくることがあった。 神谷美恵子が若いころから文学思想的な素養を積み重ね、また何度も死の淵を潜り抜け、紆余曲折を経たのちの中高年になってようやく若いころからの悲願であった「らい」と精神科医として関わる[…]
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