東谷暁『経済学者の栄光と敗北』/人間的な、あまりに人間的な

東谷暁『経済学者の栄光と敗北』/人間的な、あまりに人間的な

最近今までまったく読まなかった経済学関連の本を読むようになった。ってことを以前書いたような気がするけど、どれもコレも理論ばかり書いてある本だと面白くもなんともない。 ISBN-10: 402273499X で、最近読み出した、東谷暁『経済学者の栄光と敗北』は、ケインズ以降の主要な経済学者を性格から生い立ちから性的嗜好といったところまでも絡めて、彼ら本人の問題意識と彼らの主張した考え方の解説がなされ[…]
村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』/村上春樹バブルは崩壊するのか?

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』/村上春樹バブルは崩壊するのか?

図書館で村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を借りてきて読んだ。 冒頭から、何時死を選んでもおかしくない絶望状態にありながらも黙々となぜか生き延びたという、今までの村上春樹に無いタイプの主人公が出てきてとても期待したのだが、読み終わってしまえば全体として今までの村上春樹的な文法と単語を組みあわせたという印象である。 それでも村上春樹の作品の中で他の作品とは違った印象を受ける『ノルウ[…]
鈴木健『なめらかな社会とその敵』/ムラ社会的全体主義社会的ユートピア的ガンダーラ

鈴木健『なめらかな社会とその敵』/ムラ社会的全体主義社会的ユートピア的ガンダーラ

ISBN-10: 4326602473 某内田先生がブログでべた褒めしていてとても興味を引かれたので、鈴木健『なめらかな社会とその敵』を読んだ。 300年後の社会に対して何らかの基礎付けとなるであろう貨幣システムと社会システムと法や軍事のシステムの3つのシステムを提案する本である。 評価とか貢献度とかの価値が動的に伝播することで後払い的に自身の購買力としてチャージされたり支払われたりするPICSY[…]
草間彌生『水玉の履歴書』/「いのちだいじに」 日記/雑記/妄談

草間彌生『水玉の履歴書』/「いのちだいじに」

「世の中には二種類の人間がいる。~する人と、~する人だ」的な区分方でもって人間を真っ二つに分けるやり方があるけど、最近思うのは「自殺を身近なものと感じる人間と、まったく自分とは関わりのないものだと捉える人間がいる」ということだ。 そしてそれはたぶんほとんどの場合、ずっと固定されたものであり続けるように思う。「自殺」を考える人間は多かれ少なかれずっとその事を一生考え続けるし、それでない人にとってそれ[…]
大野更紗『困ってるひと』/教養小説ならぬ教養闘病記

大野更紗『困ってるひと』/教養小説ならぬ教養闘病記

大野更紗『困ってるひと』を読んだ。 眠たくなるまでちょっと読んでみよかーと夜中の2時に読み始めたのだが、読み始めるごとに目が冴えて結局朝まで読んでしまい、次の日は一時間睡眠で出勤する羽目になった… この本を一言で言うと原因不明治療法不明で対症療法すら手探りの難病にかかったうら若き乙女の闘病記という事になろだろうけど、決してそれだけに収まりきらないところがこの本がこれだけ売れ、この著者がこれだけ売れ[…]
ノーム・チョムスキー『9.11 アメリカに報復する資格はない!』

ノーム・チョムスキー『9.11 アメリカに報復する資格はない!』

ボストンマラソンでテロがあったのを見て、以前から気になっていた、生成文法でおなじみのノーム・チョムスキーのインタビュー集を今更ながらに読んだ。 『9.11 アメリカに報復する資格はない!』と挑発的なタイトルのこの本は、「テロリスト国家アメリカ」を前提とした9.11に関するインタビュー集であり、書かれている内容は一般的に流布しているアメリカの正義とイスラム原理主義のテロリズムの構図を根底からひっくり[…]
岩井寛『人はなぜ悩むのか』

岩井寛『人はなぜ悩むのか』

ISBN-10: 4061456938 以前に読んでとてもすばらしかった『森田療法』 の著者である岩井寛の『人はなぜ悩むのか』を読んだ。 この人は精神科医なのだが、様々な彼の患者さんの症例と同様に自分の体験もまったく同じように語ってしまうところが自然な感じでとても良い。 『森田療法』では若くして失った息子の死に顔を必死でスケッチする様や、死に臨んで失明状態でなお口述筆記する意義込みがなんともたまら[…]
ぼくんち

ぼくんち

いつも底抜けに明るくて人当たりの良い某氏が、心の中の原風景だ。っていうくらいに好きだという西原利恵子の『ぼくんち』を私もとても好きになった。 本屋さんでパラパラ立ち読みしてみた時は特に何も思わんかったけど、買って家でじっくり読むとすっかり大好きになってしまった。 これはもう本当に素晴らしい。 この人の描く「やさしさ」はなんともたまらん。 ISBN-10: 409187701X ISBN-10: 4[…]
ワアグナア『べエトオヴェンまいり』/ベートヴェンとワーグナーが出てくる薄い本 日記/雑記/妄談

ワアグナア『べエトオヴェンまいり』/ベートヴェンとワーグナーが出てくる薄い本

今日昼休みに、<ワアグナア『べエトオヴェンまいり』>を読んだ。 自分自身を投影した若い主人公がウィーンまで崇拝するベートーヴェンに会うために貧乏旅行し、苦労してベートーヴェン会い、彼に敬意を伝え、音楽について対話するという話が入ったとても薄い本である。 とはいえ著者である音楽家のワーグナーは実際にはベートーヴェンに会っていないので、これは完全に脳内で二次創作された短編ということになる。[…]
女子力とフェミニズムとシモーヌ・ド・ボーヴォワール 日記/雑記/妄談

女子力とフェミニズムとシモーヌ・ド・ボーヴォワール

先日「女子力」って単語を使ったのでちょっと「女子力」について考えてみた。 最近良く聞く「女子力」なる言葉を耳にするたびに感じてきた違和感は、「女子力」なるものが果たして「女子」にとって「力」となるのだろうかということである。 つまり「女子力」を語れば語るほどフェミニズム的文脈で言えば女子としての地位を自ら貶めていることになるのではないか?という疑問がふと浮かんだのである。 フェミニズムと「女子力」[…]
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